おかしい、だって僕が中2の時だった。
5年前だったら僕はまだ10歳、れるちと出会ってもいないじゃないか。
僕らが出会ったのは2023。
そして、その時は不慮の事故なんかじゃない。
れるちは、自分から飛び降りて行った。
僕と、れるちのお母さんの言うことは全て食い違っている。
どうして、こんなことが…?
その目はれるちの死をずっと後悔している過去に囚われた瞳だった。
僕は、れるちに話してもらった過去を打ち明けた。
学校でのイジメは知っていたらしい、
だけどまさか過去にここまで酷い無理心中があったことは知らされていなかったんだとか。
れるちのお母さんはそう言い俯いてしまった。
ホトギが周りの空気を断ち切るようにそう言った。
何かを守るためには、何かを犠牲しなくちゃいけなくて、
孤独だと思っていた僕らは、自分自身にしか錘をつけることしかできなかった。
目には涙があった。
でも先程と表情は変わり、顔は少し希望が感じられた。
月読尊。
昔、声音にいが教えてくれたような記憶がある。
確か日本神話に出てくるアマテラス、スサノオ、イザナギの禊から生まれた三貴神の1人だったはず。
まさか…あの日見た、祠。
あれは…月読神社だった…⁉︎
れるちは月読神社を見て何かを思い出したかのような表情をしていた。
そして彼は確かに僕に言った言葉がある。
「未来で、待ってる」と。
僕は、真実を知りたいから。
また、彼に会いたい。
そうして僕は月読神社に実際行ってみることにした。
僕らだけでも行けそうな場所ではあったので、また僕とホトギだけで行かせてもらうことにした。
そんな話をしていると、小さな石柱を発見した。
その先には石段が続いている。
ホトギは僕を置いてあっという間に階段を駆け上がっていく。
そこは見覚えのある景色だった。
僕が絡まれちゃって、逃げる時にここを駆け上がっていったんだっけ。
入れば入るほど森は深くなる。
道というものは全く整備されていない。
序盤はまだケモノ道くらいの悪路だったけど、歩き始めて10分ほどで既にケモノ道でさえなくなった。
完全に山に遭難した気分になる。
言われた通りに来ているから…平気、だよね…?
そこには、
れるちが飛び降りる前に見た祠と全く同じものがあった。
ホトギが見つめた方向に、小さいが花が添えられたお墓があった。
どうやら、まだ今日お供えしたばかりの花だった。
今日が命日と言っていた、きっとれるちのお母さんが来たのだろう。
そういえば、
あの日…夜の星や月、空は僕たちを見守ってくれている、そんなような気がした。
それは…この神社が関係していた…?
その時だ。
ピカッ
その瞬間、祠が強い光を放った。
僕らはその光に一瞬にして飲み込まれてしまった。
目を覚ますとそこは先程の場所ではない。
そこには_
僕の、大好きな人がいた。
体を起こすと、ふわっと浮くような感じがした。
無重力のような空間だ。
この空間には、僕とれるちしかいなかった。
思わずグッと堪えていたものが、溢れ出しそうになる。
れるちと、また会えたから。
でも僕はまた我慢して、そう問いかけた。
そうだった。
君は、死んだ。
だけど、ここに僕が来るまで、その未来まで。
待ち続けてくれたんだ。
だって時系列的におかしいじゃないか。
れるちが死んだのが先なのに僕はれるちの死後に出会ってるということになる。
そんなことが、起きていたのか。
何故かれるちと話していると違和感を感じる時があったのはそういうことか、
だけど…まだ疑問に思うことがある。
僕らが実際に生存している時に出会ったことはない、だけど何故れるちは僕と出逢おうと思ったのか。
そして、僕が同じ記憶を繰り返した理由ってなんだろう、って。
愛されることを恐れた僕。
愛すことを恐れた君。
そうだ、僕たちの出会いって…本当に奇跡だったんだ。
君の死はやっぱり最初から取り消せるはずがなかった。
でも、これだけは違うよ。
感謝を伝えた途端に、ぼろぼろと堪えた涙が流れた。
れるちの笑顔は、変わらずキラキラとしていて、
僕はその顔を見て大きく頷いた。
誰よりも大好きな、
君に。
あれから、5年がたった。
僕は大人になった。
僕らは、今絶賛山にいる。
大好きな人に会いに行くためにね。
僕とホトギは同じ高校、大学に進んだ。
音楽を専門とするところだ。
まだまだアマチュア程度だった僕たちは、本当に入学したては大変だったなぁ、
でも必死にもがいた。必死に向き合った。
そして、僕とホトギで路上ライブなんかもやったりしてた。
なんと、18歳に時にあるプロデューサーの目に止まって僕とホトギの2人でデビューすることになったんだ。
最初はグループ名を「Voice stainless」にしよう!とホトギは言い張ったものだが、
玲司さんの助言もあり僕らのグループ名は「ARIA」となった。
ちなみに星の、アリアからとった。アリアの星言葉は「奏でる幸せのうた」「導く光」
歌で誰かを幸せに、導ける星になれるようにっていう願いを込めてね。
僕たちが今回ここにこた理由は、れるちに会いに来たのと、
武道館ライブの成功祈願だ。
僕はそう言い、ホトギの突き出した拳を突き返す。
ホトギはこのやり取りが昔から本当に大好きだよなぁ、
それにしてもまさか、僕らが武道館だなんてね。本当にびっくりだよ。
全部、もう一度音楽をやる勇気をくれた君のおかげだよ。
そうホトギは言った。
今日は8月4日。
君の命日、そして後からホトギに教えてもらったことだけど誕生日でもあったんだね。
僕はひまわりを墓にそっと添えた。
僕らはそう言い、数分その場に留まって願った。
大丈夫だよね、僕らは少し違う場所にいるけど離れ離れじゃないから。
この場所に来ると、いつも脳裏に君との記憶が再生される。
君と過ごした記憶は、生涯忘れることがないだろう。
君を、愛せて良かった。君に愛してもらえて良かった。
そんな言葉をふと口にする。
聞こえてるよね、だって君はいつもここにいる。
その時、夏の暑さを和らげるような優しい風が吹いた。
その風は僕の背中を押してくれる気がした。
これは僕と、そして君の。
あの夏の日の思い出。
僕はそう君に言った。
END












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!