第15話

4話 雨の後①
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2022/09/14 10:00
アルフォンス・エルリック
に…兄さん!!
エドは破壊された機械鎧の接合部分を押さえて膝をつく。
スカー
神に祈る間をやろう。
エドワード・エルリック
あいにくだけど、祈りたい神さまがいないんでね。あんたが狙ってるのは、俺だけか?弟…アルも殺す気か?
スカー
邪魔する者があれば排除するが…今、用があるのは鋼の錬金術師…貴様だけだ。
エドワード・エルリック
そうか。じゃ、約束しろ。弟には手を出すな。
アルフォンス・エルリック
兄…!!
スカー
約束は守ろう。
アルフォンス・エルリック
何言ってんだよ…。…兄さん…何してる!逃げろよ!!
アルはエドを失う恐怖に叫ぶが、エドは逃げず、その場に座り込んでいる。
アルフォンス・エルリック
立って逃げるんだよ!!やめろよ…やめてくれ!やめてくれぇぇぇ!!
アルが叫ぶと同時に銃声が響く。
アルフォンス・エルリック
…!?
エドワード・エルリック
…!?
スカー
何!?
突然の奇襲に、スカーは後ろを振り返るが、それはスカーを飛び越えて背後に回っていた。
スカー
(上か!!)
エドに伸ばしかけた手を真横に突き出すが、それを避け、再び銃の引き金を引く。スカーはその弾が頬やこめかみに掠る。
スカー
…またも、邪魔者か…。
あなた
…間に合った…。
スカーは現れたあなたに怒りの満ちた目を向ける。あなたはエドとアルを護るように立つ。
アルフォンス・エルリック
…あ…。
あなた
…あなたが噂の傷の男…スカーね?
あなたはエドとアルに目もむけず、スカーに尋ねる。その声は、珍しいくらいに殺気に満ちていた。
スカー
…貴様は…?
エドワード・エルリック
あなた…?
銃を構えて立つあなたにエドはかすれた声で呼ぶ。
スカー
あなた?…氷紅の錬金術師…あなた・フローレスか?
あなた
だったら何?…こんな子どもの錬金術師にも手をあげるの?
エドワード・エルリック
よせ!あなた!!お前じゃ敵わねぇ!!
あなた
…心配しないで。少なくとも、あなたよりは強いわ。
エドワード・エルリック
…っ!
スカー
…今日はよき日だ。貴様から出向いてくれるとは…。探す手間が省けた。
あなた
それは…よかったわね。
そう言った瞬間、あなたは両手を合わせた。
あなた
1つ言っとくわよ。…私をそこいらの国家錬金術師と一緒にしないでね。…今の私は少しイライラしてるの。…それにこの天候…。私にとっては好都合ね。
すると、あなたの手の動きに合わせて、降っていた雨が小さな槍となってスカーに飛んでいく。
スカー
…む!
スカーは眉を寄せ、それを右手で壊していく。
スカー
…これが、貴様の錬金術か?
あなた
そうよ。…私は空気中の水すべてを氷に変えて扱う。故に””!!
あなたはそう言って再び両手を合わせる。スカーもその動きに合わせて動く。
スカー
…っ!
スカーはあなたを地面に叩き込むが、あなたは受け身を取り、スカーを蹴り、距離を取る。
あなた
…っ!やっぱり、力じゃ敵わないわね。
スカー
素早さなら、貴様の方が上だ。
あなた
お褒めの言葉…どうも!
スカーは改めて右手を大きく振って、あなたを殺そうとするが、あなたはその動きと同時に両手を合わせて、錬成した氷の鎖をスカーの右腕に巻き付ける。
あなた
捕まえたわよ?
あなたはそう言ってホルスターから再び銃を取り出す。
スカー
…ちっ!
あなたとスカーは僅かな間を置いて、互いに睨み合う。
スカー
(…少々、相性が悪いか…。)
あなた
これで手詰まり…なんて事は無いでしょうね。どうしますか?続けるのであれば本当に命の保証はしませんよ?(…エドとアルは…もう少しの間は大丈夫ね。)
氷の鎖の端を引くあなたはエドとアルの気配を探る。
スカー
…ふん!
スカーは氷の鎖を強く引く。その引きを利用してあなたは強く踏み込み、スカーの頭部に照準を合わせ、引き金を引く。
あなた
(…外した!?)
あなたは至近距離から撃った弾を避けたスカーに驚く。そして、スカーの右手に反応が遅れ、スカーの右手があなたの左肩を掠める。
あなた
く…っ!!
あなたの来ていたワンピースの肩部分が破け、血が流れる。
スカー
惜しい。
スカーはそう言ってあなたを見る。あなたの頬からも一筋の血が流れる。そして、繰り広げられる戦闘の光景にエドとアルはただ眺める事しかできなかった。
エドワード・エルリック
(あんなに…対等に戦えるなんて…。)
アルフォンス・エルリック
(あなただって…怖いはずなのに…。)
あなたの紺色のワンピースは破け、肩辺りには赤黒い染みが広がっていた。
エドワード・エルリック
(あいつは…怒ってるんだ…。)
アルフォンス・エルリック
(僕たちのために…。)
あなたは右手で左肩を押さえて立ち上がり、スカーを見ると同時に銃声が響いた。
ロイ・マスタング
そこまでだ。
そこには、銃を上に向け発砲したロイと銃を構えるリザやハボックたちがいた。
ロイ・マスタング
危ないところだったな。鋼の。あなた。
エドワード・エルリック
大佐!こいつは!!
ロイ・マスタング
その男は一連の国家錬金術師殺しの容疑者…だったが、この状況から見て、確実となったな。
あなた
…タッカー邸の殺害事件もあなたの犯行ですね。
エドワード・エルリック
…!!
あなたの言葉にエドはスカーを睨みつける。
スカー
…錬金術師とは、元来あるべき姿の物を異形の物へと変成する者。…それすなわち、万物の創造者たる神への冒涜ぼうとく。我は神の代行者として、裁きをくだす者なり!!
あなた
…あなたは神の代行人じゃない。…ただの人殺しよ。
あなたは両手を合わせると先程の錬成とは違い、眩しいほどの紅い錬成光が辺りを包む。そして、あなたはそのまま肩の傷に手を添えるとそこから紅い剣を錬成する。

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