第13話

あくむ
620
2025/11/23 12:35 更新
本題に入る前にお知らせがあります!

前の話はもう更新したので、そちらもぜひ読んでください! このアプリについてまだよく分からないので、もし読みづらかったり通知が届かなかったりしたらごめんなさい!

本日のエピソードも少し長くなります💦


















































謙杜 side
謙杜
📞もしもしー?兄ちゃん?
和也
📞もしもし!もう着いたん?
謙杜
📞うん
和也
📞今どこー?
謙杜
📞えっとー、一番でかそうな木の後ろ
和也
📞いや、どの木やねん!
謙杜
📞おぉ!ナイスツッコミ!
和也
📞うんうん、ありがとう、けどはよ言わんと兄ちゃん迷子なるで?
謙杜
📞ごめんごめん笑、門の前におるよ
和也
📞門の前かい!
和也
📞わかった、今そっちに向かうわ
ピッ
謙杜
こっちに来てるって
恭平
わかった
駿祐
和兄、ええ大学に入ったな
謙杜
兄ちゃん頭ええし、こんぐらい余裕!
駿祐
へぇ~和兄頭ええんや~
謙杜
そう!頭もええし、料理もできるし、ダンスも歌もめっちゃ上手い!
駿祐
何でもできるやん笑
謙杜
そうなんよ~大橋家の長男はすごいぞ~
駿祐
和兄、何学部なん?
恭平
経済学部
駿祐
え、すごっ
恭平
謙杜の自慢なお兄ちゃんやから
恭平・謙杜
ね~
謙杜
僕も兄ちゃんみたいにこの大学入りたいな
恭平
じゃあ、俺も行こうかな
駿祐
俺も!
謙杜
みっちーと恭平はあかん!
恭平
別にええやんか
謙杜
あかん!もったいない!恭平運動神経抜群やから、アスリートになれ!
恭平
なんでお前が決めんねん
謙杜
自慢できるから!
恭平
堂々と言い張んなや笑
駿祐
俺は?俺は?
謙杜
みっちーはイケメンやから、東大へ行け!
駿祐
いや、桜木先生かっ!
謙杜
ようわかってんな笑
駿祐
最近そればっか言うやん笑
謙杜
あ、確かに笑
恭平
すぐ何かしらのキャラの真似するんやな
駿祐
それな
謙杜
だって、、、




その瞬間だった。
風が止まった。周囲の喧騒が遠い海の底に沈んだように、世界から音が消える。

鼻腔の奥に、甘いようで、落ち着くようで、 でも……胸の奥が鉛のように重くざわって震える、あの匂い。

あれ?
なんで僕はこんなに苦しいん?



謙杜
うっ、、
駿祐
謙杜?
恭平
おい、どうした?
謙杜
うぅ、、、




視界が、一瞬でセピア色に塗りつぶされた。
目の前のみっちーと恭平の顔が歪み、視界の隅が暗い煤で覆われる。

苦しい、胸が、何者かに内側から鋭い爪で掻きむしられるように痛い。

足に力が入らへん。

頭がクラクラする。指先が痺れて曲がり、勝手に痙攣し始めた。体が、自分の意思から完全に独立してしまった感覚。

「謙杜!どこや!!俺の声聞いたら返事しぃや!!」

誰?今の誰?誰の声?

みっちー?
いや、ちゃうわ。

みっちーはもっと優しい声や。

じゃあ、恭平か?



恭平
謙杜!




いや、恭平のちゃう。

この声は、過去のフィルムが乱暴に巻き戻された音だ。

あれ?待って。

息ができない。
喉の奥が締まり、呼吸を拒否される。

え、なんで?

なんで息ができないの?



謙杜
はぁ、、はぁ、、はぁ、、




「謙杜!!!」

またあの声や。

「しっかりしぃや!俺が助けるからな!!」

なんであんたの声が頭から離れへんの?

てか、誰なん…?



駿祐
謙杜!しっかりして!!謙杜!!




みっちーの声が、水を通して聞くようにぼんやりと届く。
みっちーが触れようとする手が、遥か遠い異次元のものに見える。

恭平もなんかめっちゃ焦ってる。
初めてこんな恭平を見た。



和也
謙杜!
恭平
和兄!




あ、兄ちゃんや。
こっちに走ってる。

兄ちゃんの足音が聞こえた瞬間、凍りついていた何かが、心臓から一気に溶け出した。



謙杜
兄ちゃ、、




助けて。

助けて、兄ちゃん。



和也
謙杜!あんたどうしたの!?




兄ちゃんがひざまずき、そばに来てくれたとき、僕はすぐに兄ちゃんにしがみついた。



謙杜
匂いが、、
和也
匂い!?
大吾
ちょ、はっすん!急に、、、、えっ?
和也
大ちゃん!謙杜が!
大吾
きゅ、救急車呼ばな!
駿祐
今向かってます!
和也
謙杜!もう大丈夫からな!しっかりしぃや!




みんなめっちゃパニックになっとる。
え、これやばいやつ?

僕、やばいの?







後ろ診察室の扉が、ゆっくりと閉まる。さっきまで耳の奥で鳴っていた心臓の音が遠のいていくのに、胸の奥のざわざわだけは、まだ完全には消えてくれへん。



恭平・駿祐
謙杜!!




顔を上げれば、そこにはみんながいた。
みんなめっちゃ不安な顔していた。

迷惑かけちゃったな。

僕のせいで、みっちーと恭平はこんな時間に僕をここまで連れて来させてしまった。

僕のせいで、兄ちゃんは大学のイベントの練習できない。

僕のせいで、大吾くんはわざわざ車を出さなければいけないんや。



和也
謙杜!
謙杜
兄ちゃん、、
和也
大丈夫!?痛いとこは!?
謙杜
ううん、、
看護師
大橋様、先生が、弟様の今回の症状の原因について、少し詳しくお話したいと仰っています。お手数ですが、こちらへお越しください。
大吾
ほら行ってき、謙杜のこと俺らに任せて
和也
うん、頼む




兄ちゃんははあの看護師に呼ばれ、診察室に入った。



駿祐
まず、座ろうっか
大吾
そうね、座ろう




みっちーが、そっと手を差し出してくれた。
無理に掴むんじゃなくて、触れていい?って確認するみたいな、やわらかい手のひら。

その目も、いつものキラキラで優しいな雰囲気とは違って、どこか必死で。僕の呼吸ひとつひとつを見逃さんように、全部受け止めようとしてくれてる。



恭平
水飲む?
謙杜
うん




僕の隣に座る恭平はペットボトルを僕の前に押し出しながら、あきれたふりしてるのに、その視線の奥には明らかに焦りがある。

声は低くて落ち着いてるふうやのに、手の甲がうっすら震えてる。さっき、僕が倒れかけたときに真っ先に支えてくれた恭平の手や。

お礼言わんと。



謙杜
ありがとう
恭平
謙杜
ごめん
恭平
なにに?
謙杜
僕、迷惑かけてもうたから
駿祐
そんなことない!
大吾
誰のせいでもないんやから、謙杜が無事なら何より
謙杜
でも、、、
大吾
とにかく




大吾くんは目の前に立ちながら、僕の頭に手を伸ばし、優しく撫でた。



大吾
今日はもう疲れたやろ?はっすんを待って、俺らが家まで送るから、な?
謙杜
ありがとう




ほどなくして、兄ちゃんは診察室から強ばった笑顔で出てきた。先生から何を言われたんやろ。



和也
帰ろうっか?
大吾
謙杜は大丈夫?歩ける?




僕は弱く頭を振った。
今はまだ足に力が入らへん。

すると、みっちーが急に僕に背を向けてしゃがみ込んだ。



駿祐
乗って




僕たち5人はその後、大吾くんが車を停めた駐車場へ向かった。僕は後部座席に座り、みっちーと恭平が隣にいた。

まだ回復しきっていない体力を感じ、思わず恭平の肩に頭を預けた。すると恭平は、より楽になるよう体を寄せてくれた。 みっちーは僕の手を握り、優しく撫でてくれた。

道沿いのネオンサインが視界を照らすにつれ、僕の気持ちはますます複雑になった。

僕は一体どうしたんだろう?

病気か何かにかかっているのか?

でもなぜその匂いを嗅いだ時にだけ症状が出るんだ?

それに、頭に響いてくるあの声は誰のものなんだ?

そんなことを考えているうちに、気づけば僕の家の前に着いていた。

今度は兄ちゃんが僕をおんぶしてくれた。



和也
送ってくれてありがとう大ちゃん
大吾
ええよ
恭平
和兄、俺、今日泊まってもええ?
恭平
和兄はもう疲れてるやろ?謙杜のこと俺に任せてや
駿祐
僕も泊まりたいです、謙杜のこと心配で




あぁ~僕やっぱみんなに迷惑かけたな。



謙杜
ごめん、、
駿祐
いや、そういうことじゃ、、
和也
ふふっ、みんな優しいな
和也
けど大丈夫、心配してくれてありがとうな
和也
でも今日は帰ってきぃや
恭平・駿祐
っ、、
大吾
今日は謙杜を休ませてあげよう?
大吾
明日、来てくれるだけで助かるわ
恭平・駿祐
っ、、、
和也
ちょ、大ちゃんも何そんな泊まる気満々なん?
和也
大ちゃんも帰ってきぃや
大吾
帰るわけないやろ
大吾
あんた、自分の顔色見た?はっすんも休んでや
和也
でも、、、
大吾
俺の前に強がっても意味ないで?
駿祐
じゃあ、俺らも、、
大吾
あかん
大吾
今帰らんと親が心配になるで?明日また来てな
駿祐
、、わかりました
大吾
恭平、返事は?
恭平
、はい
大吾
よし!解散!




背中が壁に遮られて見えなくなるまで、僕たちは2人を見送った。肌を撫でる夜の風が、今日という日をさらに重く感じさせた。

今日は楽しい始まりだった。みっちーの罰ゲームから、恭平とのゲームまで。今日だって楽しい終わり方をするはずだった。なのに、どうしてこんな終わり方になるんだ?

こんな終わり方、嫌だ。



大吾
俺らも中に入ろう




部屋に連れて行かれ、ベッドに寝かされた後、僕は兄ちゃんの腕を引いた。医者が何と言ったのか聞こうとしたんだけど────



和也
今日は色々あるから、今は休んでな?
和也
休んで、また元気に戻ったら話そう?
謙杜
わかった
和也
おやすみ、謙杜
謙杜
おやすみ




重たくなった瞼を、なんとか閉じようとする。
視界がゆっくりと暗く沈んでいくのと同じように、頭の重みもじわりと枕に沈み込んでいく。

まだ体の奥には、急に意識が遠のいた時のあの妙な疲労感が残っている。
動こうと思えば動けるはずやのに、足に力が入らへんのは、今日起こったことが全部、僕の意識に重くのしかかっているからかもしれへん。

今日のことが、全部ただの悪夢やったらええのにな。
そんな都合のええこと、あるはずないのにと思いながら、

その時だった。

ふわりと、慣れ親しんだ石鹸の匂いが鼻先をかすめた。
思わず、ぼんやりしていた意識が引き戻される。

そっか。
僕はまだ恭平のパーカーを着たままやった。

明日、ちゃんと返そう。



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