side : 百瀬 🍑
夜のお散歩は、私のちいさな日課だ。
その日はなんとなく「誰かと歩きたいな」と思って、
ふと隣を見ると、瑠姫くんが外のほうを眺めていた。
声をかけると、瑠姫くんは一瞬驚いて、すぐ笑う。
その“いいよ”が、いつもより柔らかく聞こえた
夜道を並んで歩いて、
メンバーの話とか、今日の収録の話とか、
たわいもないことを話しながら進む。
風が急に冷たくなって、私は思わず
思わず笑いながら言うと、瑠姫くんが立ち止まった。
そう言って、自分の上着をすっと脱ぎ、
私の肩にそっと掛けてくれた。
上着から、ちょっとだけ瑠姫くんの香りがして、
胸の奥がじんわりあたたかくなった。
歩き出すタイミングを迷っていたら、
瑠姫くんが覗き込むみたいに顔を向けてくる。
私は、それを合図にしたみたいに、
小さく息を吸い込んで、笑った。
少しだけ誇らしくて、少しだけ照れくさくて、
でもちゃんと伝えたくて。
瑠姫くんは一瞬目を丸くして、
すぐにふわぁっとやわらかく笑った。
その表情が優しくて、
私はつい、いつもの調子でからかってしまった。
そんなやりとりをしながら、
夜の街をゆっくり歩いた。
やっぱり今日の散歩は、特別だった。














編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。