自分の心臓の音が周りにも
聞こえてしまっているんじゃないか、
それくらい大きく全身に響く。
なんとなく、耳が熱を持っている気がした。
みんなが頑張ってね、と言って去った後、
私と上鳴は再びペンを手に取る。
やけに大きくペンを走らせる音が響く。
誰もいない。いつもは誰かしらいるのに。
今日だけは、ここにふたりきり。
小さく、小さく息をつく。
目の前にいる上鳴は集中して勉強している。
小さな音ですら、立てるのもはばかられる。
集中力が切れた私は、
勉強するふりをしながら目の前の上鳴を見つめた。
まつ毛長、と思いながら見つめていたら
突然顔を上げた上鳴と目が合って、
思わず笑みがこぼれる。
彼のノートにはびっしり文字が敷き詰められていて、
努力の跡がうかがえる。
すごいなあ、と素直に尊敬した。
そう言いながら彼が指さすところを見る。
たまたま昨日勉強したところだった。
無意識に彼のほうに近寄る。
しどろもどろ、詰まってばかりの説明だったけれど
上鳴は真剣に聞いてくれていた。
ばっと顔を上げると、
上鳴も同時に顔を上げたみたいで。
ばっちりと目と目が合う。
その距離、およそ5㎝。
琥珀色の瞳に私が映っていて、
その顔は驚くほど真っ赤だった。
私の口から出たのは掠れた声。
上鳴は、その大きな瞳をさらに見開くと
みるみる顔を赤く染める。
そう言って、体を反らして私から離れる。
心臓がどきどきうるさい。
聞こえてしまっていないか、不安だ。
上鳴は自分を落ち着かせるようにふう、と息を吐くと
笑って私を見た。
ぎゅんっ、と胸が撃ち抜かれるような感覚。
駄目だ。このままだと、上鳴に惚れてしまう。
私は心の中で白旗を上げ、小さくため息をついた。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。