…-3階食堂-…
現在の時刻は朝の8時19分。
七海は点滴をからころと引きずり1つ、欠伸をこぼして
食堂へと向かった。
朝だと病気の関係もありなかなか動けない。
体を上手く動かせない時、一緒によく付き添ってくれるのが
同室の澪田 唯吹という同じく奇病を患っている少女だった。
澪田は確かに毎朝、ハイテンションで活力ある立ち振る舞いだ。
だがそれには奇病が関係している訳であって
毎朝では無く正しくは四六時中が正解だ。
食堂の軽い透明な自動ドアが七海と澪田を感知して
すっ、と開き澪田は元気よく挨拶して中へ入った。
七海と澪田が食堂に入った頃には
もう何名かがその場に揃っていた。
白色の細長い机を消毒液を付けた雑巾で
丁寧に掃除している東条。
そして東条の腰になんの躊躇いもなく思い切り抱きつく王馬。
それをヒヤヒヤとした緊張の視線を向けて
止めに入ろうとする最原。
ここだけで3人だ。
そういえばそうだった。
ここの孤児院に勤めているのは全員、学生だ。
理由はいくつかあるがその中で1番大切にしているのは
奇病を背負った子供とそれを看護する者の距離だった。
どうしても奇病を患っている子供は
それなりに家や環境のせいでこの孤児院で生活している為
大人を苦手としている患者が多い。
だから年齢もそれなりに近い上に
バイトもして大丈夫な年齢の高校生にここの孤児院を任せているのだ。
少しでもたくさん面識がある人がいないかなあ、と思い
澪田はキョロキョロと室内を見渡した。
すると食堂の隅にある
茶色い木の椅子に腰掛けて読書をしている狛枝を見かけ
澪田は満面の笑みで声をかけた。
それに気づいた狛枝もまた挨拶を返す。
狛枝 凪斗。
彼もまた奇病を患っておりこの施設を利用している者の1人だった。
澪田が「久しぶり」と言った通り
彼は体調が優れない日の方が多くこうして食堂に来れている事がたいへん珍しい。
少しクスッと笑いを入れながら七海にそう伝えた。
それを聞いた七海は控えめに頷き
食堂の席に着いた。
澪田が七海の隣に座ろうとした時、ちょうど朝食が出来たようで
食堂の奥にある厨房の扉が開き
中からいつもは厨房のキッチンに立て籠っている花村が出てきた。
時間はいつの間にか8時30分を回っていた。
この時間になると
段々、食堂に人が朝食を求めて一斉に
部屋から抜け出してくる時間となる。
だから七海も澪田もいつも少し早めに来て
その朝食ラッシュに巻き込まれないようにしている。
澪田は七海にそう伝えると全速力で走りながら
朝食が並べられた机まで走って行った。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。