今日も朝はやくから起きて学校にいく準備をする
髪を可愛くセットして、うっすらとメイクをして
彼が好きな香りの香水を手首に1度だけかけて
擦り合わせて、首、足首、と順番に触れる
ピンポーン
急いでカバンをもってドアを開ける
私がそう言うと、彼はふわっと優しい笑みを浮かべて
そう…名前を呼んでくれる
気づいてくれたことが嬉しくて自然と口角が上がる
そう言いながら私の手を握って、はよ行かな遅刻すんで、と軽く引っ張って進むヨシくんはひとつ上の優しい私の大好きな彼氏
そう言うと、ごめんごめんって少し笑いながら大きな暖かい手で私の頭を優しく撫でてくれる
その心地良さにさっきまで拗ねていたことを忘れてしまうぐらい安心するもの
少し駆け足で校門をくぐり抜けるとたくさん人が集まっていた
『金本先輩おはようございます!』
『おい、しけのり〜ㅋㅋ』
『ヨシくんおはよ!!』
男女平等に優しくて人気がある自慢の彼氏でもあって、たまに寂しくなる時がある
でも、めんどくさい女だと思われたくなくて、よしくんには素直にわがまま言ったりできない
そう呟く私の小さな声は、他の子がヨシくんに話しかける声でかき消された
体育祭が始まり、最初の100メートル走、部活対抗リレー、色別リレーが終わり、いよいよみんなが楽しみにしていた借人競走に入った
これはヨシくんも参加するらしくて、しかも1番最後らしい
かっこいい姿が見れてずっとわくわくした感覚だった、
1番最初の人達がスタートした
借人競走は楽しむためだけにあるものだったから男女混合になっている
それぞれがおだいにそって連れていく中、1人の女の子が順番待ちの列へと戻っていき、キョロキョロしていた
どんどんみんながゴールしていっている
やっと見つけたのか焦った様子で向かったその方向をみてみると、
彼女はヨシくんの腕を掴んでほんのり頬を赤くし、照れた様子で走っていた
腕を組むようにして、走っていく姿にみんなの反応は様々だった
口々に放たれる言葉の中で私の耳にははっきりとひとつの言葉が聞こえて、上がらない口角がまたさらに下がった様な感覚に襲われた
『お似合い』
その言葉は誰の彼女が聞いてもよく思わないものだろう
自分の彼氏と、可愛らしい女の子が腕を組んでいる姿に誰かが『お似合い』だと呟く
これ程苦しくて、胸を痛めつける言葉はきっとないだろうな
2人が並んでゴールして、女の子はよしくんにお題を耳打ちする
そのお題は2人から教えてもらわない限り誰も分からない
でも、女の子が照れている様子から誰もが恋愛感情に近いものだと感じる
ここからだとヨシくんの表情がよく見えなくてさらに不安な気持ちが私を苦しめていく
いつの間にかどんどん順番が過ぎていたみたいでふと、見た時にはすでにヨシくんの番が近づいていた
周りからの『よしのりずっと女子に連れていかれてる』、その言葉だけで全ての状況が理解出来てしまうことに溢れだしてしまいそうになる感情をグッとこらえて
再び列に目を向ける
借りられたヨシくんが駆け足で自分のコースに並ぶ
また、借りられたんだ、そう思う暇もなくパンっというスタートの合図がなった
皆が一斉に走り出しひとりひとりがほとんど同時にお題をとった
誰もが予想しなかっただろうな
『え、みんな固まってんじゃん』
『そんなヤバいん⋯?ㅎ』
『こえーㅋㅋ』
みんなが1歩も動かずにただじっと紙をみている
なんのお題なんだろうと思っていると
どんどん皆がゆっくりと進み出し、一人一人がおだいに沿った人を引っ張っていく
ヨシくんも動き出したみたい、
彼はどこかをみてから、少しずつこっちへやってくる、私がいる赤組に止まると
そう、微笑むよしくんにわたしはいいよ、と返事してヨシくんの前に立つ
すると、彼は遠慮がちに私の手を握り、引っ張られる感覚に身を任せながら走る
周りからの歓声なんて聞こえないぐらい
この状況に色んな感情があふれる
ゴールに着いてヨシくんにお題を聞く
なんて、作り笑顔を顔に貼り付けて自然に見えるようによしくんに笑いかける
ねえ、ヨシくんどうして、、、
すぐに来てくれなかったの…?
なんで、1度赤組じゃない、青組の方へ視線を向けたの、、、なん、で遠慮なんてしながら私の手を握ったの、
たくさんのわたしに襲いかかる疑問に堪えていた涙がまた溢れてきそうになる
だめだ今回は間に、合わないっ……
泣いた顔を可愛くない顔をよしくんに見せたくなくて目の前にいるヨシくんに背を向けるように行くあてもなくただ走り続ける
息切れしてでもまだ周りに人がいるから止まれない
泣いてる顔を見られたら『ヨシくんに釣り合わない』、そう言われる気がして過呼吸気味になりながら走った
もう少しで人混みから抜けれる、そう思っときにわたしが1番聞きたくなくて大嫌いな声がわたしの耳に深く突き刺さってきた
心臓が止まったかと思った、その声が聞こえた途端に呼吸が止まったようなきがして、この空間にはわたしとあの子とヨシくんしかいない気がして
押し寄せてくる嫌悪感に吐き気、絶望感に襲われて
動かない体を無理やり動かした
人気のない校舎裏に着くと重りが外れたかのように勢いよく膝から崩れ落ちた
地面に膝を着いてすぐにさっきの光景がフラッシュバックした、少し長めでさらさらの髪をサイドで縛って、大きくてクリっとした目に、薄くてほんのり色がついた唇、綺麗に揃えられた前髪に巻かれた美しい”青色”のはちまき
わたしよりも遥かに可愛いくて、人付き合いが上手なお姉ちゃん
小さい頃からずっとわたしの宝物を奪い続けて、苦しめてきたわたしがこの世で1番恐れていて、大嫌いなお姉ちゃん
甘ったるい声でヨシくんの名前を呼ぶ姿
その事実に小さい頃の記憶が次々と思い出される
わたしがずっと待ち続けてやっとの思いで買ってもらった少し高めの可愛らしいネックレスも、
わたしが初めて好きになって長い間片思いし続けてやっと、付き合えた幼なじみの彼氏
おばあちゃんが、私のために、と手作りしてくれたぬいぐるみ
唯一私が信頼できて大好きだった親友、
全て奪われてきた大切な存在が私の脳内へ作り込まれてくる
そして、新たに追加された記憶にまた絶望する
朝、いつも迎えに来てくれて、登校中もずっと手を繋いでくれて、わたしにたくさんの初めてをくれた大切なかけがえのない存在のヨシくんが
わたしがこの世で1番嫌いな姉に簡単に奪われて
わたしが知らないところで2人は会って、親密な仲になっていたなんて、、
で、もまだ分からないから、まだヨシくんが姉に取られたかどうかなんて決まったわけじゃない
ただ単によしくんの名前を呼んだだけなのかもしれない、ヨシくんは青組の方なんて見ていなかったかもしれない
そう、小さな期待をこめて、重い体をおこして人がいる方へと進もうとした時
私の聞き間違い出会って欲しい
ここは人気がない静かなところ
旧校舎で少し暗くて、誰も近寄らないところ
そう自分に言い聞かせて、声がしたかもしれない場所へ1歩ずつ近づいた
ここの突き当たりを曲がった先に誰もいなければ聞き間違いだったということ
神様は本当に意地悪だ
どうして、こんなにもわたしに苦しい思いをさせるんですか、…?
どうしてッ……なん、でっ…!!
目の前でヨシくんとお姉ちゃんが手を繋いで近い距離にいるの、、、?
おねがい……、
やめてよ、
その先は言わないで……
ヨシくんは私を選んでくれるよね、
お姉ちゃんになんて勝てない、
考えなくてもすぐ答えられるでしょ、
おねがいこのまま答えないで、
その言葉が聞こえた瞬間、お姉ちゃんの嬉しそうな顔とヨシくんの照れたような顔を見ていたくなくて、お姉ちゃんの高い声で喜ぶ声を聞きたくなくて
私は誰もいない使われていない屋上へと走った
このまま風といっしょにどこかへ飛んでいきたい
もう、いっそのこと” 家の中でずっと一緒に居てくれる人 ”だったら不安にならないかな…ㅎ
知らないうちに重くてめんどくさい女になった自分に笑みがこぼれる
結局わたしはお姉ちゃんになんて勝てなかった
よしくんを私だけのものになんて出来なかった
みんなに優しいヨシくんはみんなに好かれすぎていつの間にかわたしの手の届かない場所に言ってしまっていたみたい
わたしは肩書きだけの彼女だった
やっとの思いででた1粒の涙が流れ始めるのと同時に
手をつけてもたれかかった柵から
パキッと音がして、勢いよく校舎の外へと投げ出された
首にはヨシくんが初めてくれたネックレスをつけて
どこかに飛んでしまった涙とともに地面へと真っ逆さまに落下していった
大好きだったよ──────。















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!