Relu Side
見慣れた場所…………な気がするんやけど、
どこやったっけ。ここ。
長い廊下。高級感のある内装。
ふと周りに誰もいなくて真っ暗なのに気付く。
1人。
独り。
孤独。
誰もおらん。
響くのはただ静寂。
思わず座り込もうとした目の前を
通り過ぎた誰か。
あ、よかった、おるやん………
誰。誰だっけ。
赤髪。花のヘアピン。
知ってる。知ってんのは分かんのに。
名前を呼べないから当然その子は
通り過ぎて闇に溶ける。
なにか、わかってない。
分かんのにわかってない。
そんな感じで悩んでたら今度は二人。
声は聞こえないけどなんか話してる。
茶髪と紫髪。ヘアピンとピアス。
知ってる。知ってんのに。
それでも、2人はそのまま歩いて行った。
二人の背中も見えなくなって急に恐怖が襲う。
そして、恐怖がピークに達して
座り込んだ。
泣きじゃくった。
叫んでやりたかった。あいつみたいに。
でも。その“あいつ”もわからん。
もうやだって逃げ出そうと、顔を上げた時。
その子はれるを冷たく見下ろした。
正直怖くてびっくりした。
メンタルもキテたから恐怖の声が出た。
やっぱ知っとる。知っとんのに。
その子はまた闇に歩いていく。
闇は怖くて足は動かんのに、それでも
その子を追いかけようとした。
今叫んだ言葉は名前やったんかな。
わからんけど、体は動いた。
孤独への恐怖が恐怖に勝ってる。
でも、なんで、独りをこんな怖がってんねや。
なんて曲がった角。
ほっぺに走る久々の痛み。
怒られなかったんかな、痛いの久々や。
耳を塞いでも聞こえる声。
怖い、怖い怖い怖い!!
もうやめて。怖いねん。助けて……ッ。
一段通る声が走り、視界が明るくなった。
夢。夢やった。
さっきまで名前が分からなかった皆の名前も分かる。
久々にお母さんの顔を思い出したな。
最近、ずっと楽しくて、仕方がなくて、
忘れてた。
ちがう、皆で埋めて忘れたかったんや。
この夢は、きっと警告。
れるは皆とは地位も立場も何もかも違う。
れるはこの家の子供やなくて、“お母さん”の子。
立場は、明確にしないと。
もっと明確に下に回る努力を。
当たり前なのに悲しくなった。
ただ、ほんまに悲しい時は涙は出ないことを知った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!