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第5話

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2021/02/13 09:02



「お風呂ありがとうございます」

涼原)「いいえ〜」




キッチンからひょこっと顔を出したあなたさん


机に並んだカレーからは美味しそうな匂いがした




涼原)「勝手に用意しちゃったけど、夕飯食べちゃった?」

「いや、まだっす」

涼原)「よかった〜」




"どうぞ"と言って席に着く彼女に続いて自分も椅子に座った


丁度夕飯をどうするか悩んでいたところだったし、料理も得意ではなかったので正直めちゃくちゃありがたい





「いただきます」

涼原)「うわっなんか緊張する」

「めっちゃ美味い」

涼原)「本当?」

「なんか、落ち着く味?」

涼原)「落ち着く?...それ褒められてる?」

「褒めてますよ」

涼原)「汐恩くんって変わってるね」





ふわっと笑う彼女


いきなり押しかけてきた見ず知らずの男を泊めて、ご飯まで食べさせてくれて


彼女の方が相当変わり者だと思う





「会社員って何の仕事してるんすか?」

涼原)「雑誌の編集社で働いてるの。内容とか誰を起用しようとか考えてるよ」

「へー、じゃあ芸能人とも会うんすか」

涼原)「そうだね、社内とかたまに現場に行った時に会うかな」

「すげぇ」

涼原)「汐恩くんは文系?理系?」

「文系っす」

涼原)「なんの授業専攻してるの?」

「韓国語にしました」

涼原)「へ〜!将来韓国で仕事したいの?」

「いや、日本人が一番覚えやすいのが韓国語らしいんで」

涼原)「そういうことね」

「まあでも、興味はあります」

涼原)「そっかそっか、入学式はいつ?」

「明後日っす」

涼原)「楽しみだね〜」





談笑しながら食べる夕飯はとても美味しかった





「あ、食器洗いますよ」

涼原)「大丈夫だよ〜」

「いやでも」

涼原)「じゃあ洗ったの拭いてもらおうかな」





そう言われ、黙って掛けてあったタオルを手に取る


あまりに綺麗な部屋を見て勝手に彼女は潔癖症なのかと思っていた


人の使った食器を洗うのは嫌なんじゃないかと思い提案したがそういうわけではなさそう





「あなたさんって潔癖症だったりします?」

涼原)「え?全然そんなことないけど」

「じゃあA型っすか?」

涼原)「O型」





全く的外れだった俺の予想


不審に思ったのか"何かあった?"と聞かれる





「いや、部屋がめちゃくちゃ綺麗なんで」

涼原)「あー!使ってなかったの!」

「使ってなかった?」

涼原)「うん、仕事が忙しくてね。本当はずぼらだから片付けとか全然できない」





なんでも定期的に片付けをしに来てくれる幼馴染みが居るらしい


その人がかなり几帳面で潔癖っぽいところがありここまで綺麗にしてくれるそうだ


彼女が掃除が苦手というのはかなり意外だった





「そんなに忙しかったんすね」

涼原)「まあでも今は一段落ついたよ」

「お疲れ様です」

涼原)「ありがとうございます?」





そんな会話をしながら洗い物を済ませ、それぞれ部屋へ戻った


部屋にはさっき運んだダンボールたちとベッドや机があった


1人になるとどっと疲れが押し寄せる


今日は本当に色々あった


そう思いながら簡易的にひいたマットレスの上で目を瞑るとすぐに夢の中へ誘われた











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