ぞくり。
いつもとは真剣味が違う母さんの声。
げっ、母さんが今度こそ本気で怒った…?
思わずずっこけそうになった。
うん、それは合ってるよ父さん。
ばっー
ガシャーン!
皿が割れる音。
恐らく母さんが皿を投げたのだろう。
ああ、女って怖い。
もう…本っ当父さん馬鹿。
ひいっ!
は、はいっ!
え、何僕何かした!?
それに降りられないのは母さん達のせいだろ!
もし断ったら…うん、想像しないでおこう。
しぶしぶ階段を降りた。
ソファーでうつ伏せになってる父さんは無視。
志望校?何、そんなの知らない。
「将来宇宙飛行士になるんだーすげぇだろ!」とか、
「私ねー、この前英検1級受かったの!」とか。
くだらない。
テキトーに働いて、食っていければそれでいい。
そんな名誉とか誇りなんて、いらない。
恥ずかしくなんかない。
むしろテンプレートな生き方でないのを褒めて欲しい。
食べたい時に食べて、寝たい時に寝て、生きたい時に生きて、死にたい時に死ぬ。
そんな人生が送れたら、どんなにいいだろ。
僕は正直、明日よりも今のために生きたい人間だし。
今が楽しけりゃ、明日なんてどうでもいいだろ。
は?
東高って確か…響が通ってるとこだったよね?
…何気に僕を馬鹿にしてないか?
確かにテストの重要性が分からなくていつもテキトーだけどさ。
野口英世が描かれた札を僕に押し付け、背中をグイグイ押してくる。
あっ、おいちょっと。
背中に、
という声が聞こえた。
途端母さんはボクから離れ、
…くだらなすぎる。
どうしようかな、これ。もう外に出るしか僕には選択肢はないみたいだし。
せっかくだし、行ってみるか。
東高周りまで。
かかとを履き潰したスニーカーに足を突っ込む。
まじ黙ってろ父さん。過剰なアイドルオタクかよ。
あーもう僕しーらない。さっさと出かけよ。
父さん、お疲れ様でーす。















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!