アスファルトを歩きながら、葬式での奏さんの言葉を思い出す。
あれは楽君のことだったんだね、と微笑む。
家帰って食べた時はびっくりしたなあ。
そして。あの言葉を。
とても、イメージ出来る。
俯きながら床の模様を眺めていたら、ぎゅっと手を握ってくれたんだ。
それきり何も喋らなくなって。
この日のことは、一生忘れないと思う。
満開だった桜は散ってしまって、足元に薄ピンクの花びらが落っこちていた。
公園に辿り着いたと分かって、ベンチに顔を向ける。
…誰だ、あれ。足が長くて、茶色の髪で、しょんぼりした顔で空を見つめている。
こんな遠くから僕の声が届いたのか、ふっとこちらを見た。うん、間違いなく組長だ。
でも、どうしてここに──?
歩み寄って隣に腰掛けると、悲しそうに目を伏せた。
あれ、そうだっけ…?
あーでも僕みたいに、誰も覚えてないんだろう。きっかけなんてすぐ忘れるし。
…皆、「組長」としか呼ばないもんな。組長にとって、「組長」と呼ばれるのは嫌だった、という訳か?
凄いややこしいけど。
組長が組長で良かった。
そう言いかけて言葉に詰まった。
違う。違う。そうじゃない。組長の名前は──。
そして、改めて敬意を込めて語りかける。
伊織が目を見張る。
僕が伊織の名前を知っていたことに、おどろいているのか。顔を見上げたまま、動かない。
…長い…な。気絶してる?大丈夫かな?
その時、大きく見開かれた伊織の瞳から、ぽろっと涙がこぼれた。
一粒きりのきらきら輝く雫。
それがすーっと落ちていく。
整った眉根が怪訝そうに寄せられる。
ぎくり。
どーしてそんな鋭いんだよ!
え?
顔真っ赤にしながら催促。
…何がなんやら…
12時を告げる公園の時計。
それらを囲むように、紫百合が咲き誇っていた。
響。
とりあえず、今は毎日楽しいとだけ伝えておくよ。君のおかげでね。
僕の初恋を奪った責任は、ちゃんととってもらおう。
それと───。
紫苑。
明日。12時に、公園で。
END
















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。