轟 side
「…ごめんね。」
俺達の前に音も無く立ちはだかったのは、約1ヶ月前から失踪していた級友だった。
マンダレイの"テレパス"によって、泡沫あなたはもう敵だということは全員に知らされている。
____それでも、俺には彼女が失踪前と何ら変わっていないように見えてしまっていた。
不器用ながらも優しく接してくれた、皆が知ってるであろう”泡沫あなた”に。
彼女の長い髪が、夏の生暖かい風に吹かれて靡く。
オッドアイに変色した朧気な瞳がゆらりと揺れたかと思えば、色白な頬に一筋の雫が伝った。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ぽたり、ぽたり、
涙が止めどなく溢れる。
大好きだった皆の姿を歪ませてしまうほどに
ブワアアアァァァァッ…!!!
泡は、一瞬にして私の視界を埋め尽くした。
水色、黄緑色、緋色、紫色…
幻想的な色によって彩られた美しい泡沫に、思わず目を見張る。
思うように息が出来ない。
痛い。辛い。苦しい。淋しい。
_______それでも それらを遥かに上回った、救いを期待してしまうことへの『憂虞』の感情
〝自分のせいで人を殺した。〟
私が何人の命を救おうが、どれだけ贖罪をしようが、その事実は変わらない。
それを誰かに打ち明けたところで、到底受け入れてもらえない。
裏切られたように感じて、自分が傷つくだけ。
忘れられない思い出に終止符を。
終わらない後悔には、それすらも塗り潰す鮮烈な快感を。
堕ちて、堕ちて、堕ちて。
堕ち続けたその先に在るモノが、絶望だとしても。
連合のみんなが居れば、私はそれでいいから。
みんなも。
私のことなんか綺麗さっぱり忘れて、いつもと変わらぬ日々を送って欲しい。
ポケットに忍ばせていた煙幕を投げ捨てる。
ぶわりと白煙が拡がったと同時に、私は森の細道へ逃げ出した。
次はこちら!
前回からかなり間が空いてごめんなさい💦
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。