同時に出すと古い方の話数じゃなくて新しい方の話数に飛ばされるらしい。
これの一個前見てない人は一旦そっちから見てね
蘭輝のその言葉で戦いは始まった。
陽炎のような揺らぎが、視界を覆った。
空気が歪み、距離感が狂う。
熱を帯びた揺らめきが、渚茶の周囲を包み込む。
景色が波打ち、湊斗と蘭輝の姿が掴めない。
鎧を解こうとしていた意識が、即座に切り替わる。
――今、解除したらやられる。
直感が、はっきりとそう告げていた。
渚茶は一歩、後ろへ踏み込む。
バックステップ。
陽炎の範囲から抜けた、その瞬間だった。
歪んだ視界の中から、鋭い水の刃が突き出される。
反応が、わずかに遅れた。
ガキン――ッ!
水刃が緑鎧を切り裂く。
装甲が抉れ、蔦が断ち切られた。
鎧が、脈打つように再生を始める。
だが――遅い。
形も歪み、元の精度には程遠い。
湊斗は間を与えない。
手首を返し、さらに水刃を振るう。
渚茶の手に、植物の刃が形成される。
水と草、刃と刃が正面からぶつかり合った。
キン、と高い音。
受け止めた――その瞬間。
背後に、熱を感じる。
振り返るより早く、渚茶は地面を強く蹴った。
拳に炎を纏い、蘭輝が踏み込んでくる。
その攻撃をかわすため、渚茶は地面を強く蹴り上空へ跳ぶ。
空中で巨大な葉が生成され、叩きつけるように振り抜かれる。
衝撃波が、二人を同時に吹き飛ばした。
距離が開く。
だが、渚茶の息はすでに荒い。
蘭輝は即座に構え、炎を収束させる。
無数の紅蓮の矢が、渚茶へと降り注ぐ。
避けきれない。
一本が、右腕を貫いた。
鎧が、燃え始める。
燃え広がる前に、渚茶はその部分だけを無理やり引き伸ばす。
切断、炎を断ち、延焼を防ぐ。
だが――それは、一瞬の隙だった。
轟音と共に、激流が解き放たれる。
押し流すための、圧倒的な水量。
渚茶は踏みとどまり、地面に意識を集中させる。
地面が割れ、樹木が伸び上がる――はずだった。
だが。
成長が、止まる。中途半端な高さで、ぴたりと。
体力の限界。
軽度の能力切れ。
激流の一部が渦を成し、渚茶の身体に絡みつく。
逃げられない。
もがこうとしても、力が入らない。
絡みつく水流の中で、渚茶は息を整えることすらできなかった。
剥がれ落ちていく鎧。
再生は、もう追いつかない。
その言葉は、敵意よりも静かだった。
炎が、一本の槍へと形を成していく。
その声を聞いた瞬間、
渚茶の胸に、すとんと何かが落ちた。
誤解は、まだ解けていない。
言葉は、もう届かない。
蘭輝が詠唱を始める。
集束する、灼熱。
その声が、放たれる直前。
張り裂けるような叫びが、戦場を貫いた。
それは、今まで誰も聞いたことのないほど大きな声だった。
怯えも、遠慮も、すべてを振り切った、必死な叫び。
炎槍が、放たれる寸前で静止する。
言葉が、空気を切り裂いた。
二人の表情が、はっきりと揺れる。
迷いではない。驚愕だった。
湊斗の声と同時に、水流が霧散する。
絡みついていた激流が消え、拘束が解かれた。
力が抜ける。
膝が折れ、そのまま前に倒れ込む。
意識が、ゆっくりと薄れていく。
霞む視界の端で見えたのは、
罪悪感に色を染めた、水鏡湊斗と火威蘭輝の顔。
必死に、何度も名前を呼ぶ声。
泣きそうで、震えていて、それでも必死な声。
そう思ったところで、
渚茶の意識は、完全に闇へと落ちた。

















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。