第10話

第9話 交錯する正義
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2026/02/03 09:11 更新
同時に出すと古い方の話数じゃなくて新しい方の話数に飛ばされるらしい。
これの一個前見てない人は一旦そっちから見てね
蘭輝のその言葉で戦いは始まった。
陽炎のような揺らぎが、視界を覆った。
空気が歪み、距離感が狂う。
火威蘭輝
火威蘭輝
焔景・蜃気楼えんけい・しんきろう
熱を帯びた揺らめきが、渚茶の周囲を包み込む。
景色が波打ち、湊斗と蘭輝の姿が掴めない。
草薙凪茶
草薙凪茶
……っ!
鎧を解こうとしていた意識が、即座に切り替わる。
――今、解除したらやられる。
直感が、はっきりとそう告げていた。
渚茶は一歩、後ろへ踏み込む。
バックステップ。
陽炎の範囲から抜けた、その瞬間だった。
水鏡湊斗
水鏡湊斗
水刃・潜流斬すいじん・せんりゅうざん
歪んだ視界の中から、鋭い水の刃が突き出される。
反応が、わずかに遅れた。

ガキン――ッ!

水刃が緑鎧を切り裂く。
装甲が抉れ、蔦が断ち切られた。
草薙凪茶
草薙凪茶
……くっ!
鎧が、脈打つように再生を始める。
だが――遅い。
形も歪み、元の精度には程遠い。

湊斗は間を与えない。
手首を返し、さらに水刃を振るう。
水鏡湊斗
水鏡湊斗
まだだ!
草薙凪茶
草薙凪茶
……っ、命剣・草薙めいけん・くさなぎ
渚茶の手に、植物の刃が形成される。
水と草、刃と刃が正面からぶつかり合った。

キン、と高い音。

受け止めた――その瞬間。
背後に、熱を感じる。
草薙凪茶
草薙凪茶
――後ろか!
振り返るより早く、渚茶は地面を強く蹴った。
火威蘭輝
火威蘭輝
逃がさない!
拳に炎を纏い、蘭輝が踏み込んでくる。
火威蘭輝
火威蘭輝
炎拳・灼撃えんけん・しゃくげき
その攻撃をかわすため、渚茶は地面を強く蹴り上空へ跳ぶ。
草薙凪茶
草薙凪茶
……っ、命葉・天狗の葉めいよう・やつで
空中で巨大な葉が生成され、叩きつけるように振り抜かれる。
衝撃波が、二人を同時に吹き飛ばした。
水鏡湊斗
水鏡湊斗
……っ!
火威蘭輝
火威蘭輝
く……!
距離が開く。
だが、渚茶の息はすでに荒い。
水鏡湊斗
水鏡湊斗
……あの鎧、何とかしないと。
火威蘭輝
火威蘭輝
任せて。
蘭輝は即座に構え、炎を収束させる。
火威蘭輝
火威蘭輝
炎穿・紅蓮矢えんせん・ぐれんやらん》!
無数の紅蓮の矢が、渚茶へと降り注ぐ。
草薙凪茶
草薙凪茶
……っ!
避けきれない。
一本が、右腕を貫いた。
鎧が、燃え始める。
草薙凪茶
草薙凪茶
――っ!
燃え広がる前に、渚茶はその部分だけを無理やり引き伸ばす。
草薙凪茶
草薙凪茶
命剣・草薙めいけん・くさなぎ
切断、炎を断ち、延焼を防ぐ。

だが――それは、一瞬の隙だった。
水鏡湊斗
水鏡湊斗
激流・奔濤げきりゅう・ほんとう
轟音と共に、激流が解き放たれる。
押し流すための、圧倒的な水量。
草薙凪茶
草薙凪茶
……っ!
渚茶は踏みとどまり、地面に意識を集中させる。
草薙凪茶
草薙凪茶
命樹・天衝めいじゅ・てんしょう
地面が割れ、樹木が伸び上がる――はずだった。

だが。

成長が、止まる。中途半端な高さで、ぴたりと。

草薙凪茶
草薙凪茶
……くそっ......
体力の限界。
軽度の能力切れ。
水鏡湊斗
水鏡湊斗
……終わりだ。
激流の一部が渦を成し、渚茶の身体に絡みつく。
水鏡湊斗
水鏡湊斗
うず》!
逃げられない。
もがこうとしても、力が入らない。

絡みつく水流の中で、渚茶は息を整えることすらできなかった。
剥がれ落ちていく鎧。
再生は、もう追いつかない。
火威蘭輝
火威蘭輝
……ごめんね。
その言葉は、敵意よりも静かだった。
火威蘭輝
火威蘭輝
でも――これ以上、見過ごせない。
炎が、一本の槍へと形を成していく。
火威蘭輝
火威蘭輝
人を傷つける魔物は……ここで終わらせる
その声を聞いた瞬間、
渚茶の胸に、すとんと何かが落ちた。
草薙凪茶
草薙凪茶
あ……あ.......
誤解は、まだ解けていない。
言葉は、もう届かない。
火威蘭輝
火威蘭輝
……とどめよ。
蘭輝が詠唱を始める。
集束する、灼熱。
火威蘭輝
火威蘭輝
炎槍・緋爆突えんそう・ひばくとつ――
その声が、放たれる直前。
霊山目森
霊山目森
やめてください!!!
張り裂けるような叫びが、戦場を貫いた。
それは、今まで誰も聞いたことのないほど大きな声だった。
怯えも、遠慮も、すべてを振り切った、必死な叫び。

霊山目森
霊山目森
――その人は……!
炎槍が、放たれる寸前で静止する。
霊山目森
霊山目森
仲間です!!!
言葉が、空気を切り裂いた。
水鏡湊斗
水鏡湊斗
……っ!?
火威蘭輝
火威蘭輝
な……!
二人の表情が、はっきりと揺れる。
迷いではない。驚愕だった。
水鏡湊斗
水鏡湊斗
……解除!
湊斗の声と同時に、水流が霧散する。
絡みついていた激流が消え、拘束が解かれた。
草薙凪茶
草薙凪茶
……たす、か……
力が抜ける。
草薙凪茶
草薙凪茶
……った……?
膝が折れ、そのまま前に倒れ込む。
意識が、ゆっくりと薄れていく。
霞む視界の端で見えたのは、
罪悪感に色を染めた、水鏡湊斗と火威蘭輝の顔。
霊山目森
霊山目森
草薙くん!草薙くん!!
必死に、何度も名前を呼ぶ声。
泣きそうで、震えていて、それでも必死な声。
草薙凪茶
草薙凪茶
(――ああ。ちゃんと、届いたんだ。)
そう思ったところで、
渚茶の意識は、完全に闇へと落ちた。

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