つい先日、理事長の孫を襲った先生が退職処分となった。そう、生徒に好かれていたあいつ。
正直、俺は信じていなかった。
…だって、あいつがやるわけないって思ってたから。
あんなに生徒に慕われて、周りにはいつも生徒がいて、笑顔なあいつが、こんなことするはずがないって……。
だって、あのときも
笑いながら、真剣に現場に向かっていた。
いくら”人望”という壁を積み上げても、こんなにも簡単に崩れる。
理事長の「退職処分」というたった一言で、あいつはいなくなってしまった。
いかにも理事長の言葉の重さがわかってしまう。
生徒のたった一言で、周りの壁が崩れ、後戻りが出来なくなり、信頼を失ってしまった。
最後のあいつはどうしようもなく、ただどうしようもなく笑っていた。
最後に笑うって………どういう神経だよほんとに…
…まぁ、俺の家系能力で見たら…いかにも絶望オーラ放ってたけどね。
あのとき…
話し掛けようとしても、無視された。
「退職処分ってされたし、反応ができないのも、無理ないよな」と
前までも、同僚達は、
「疲れているんですかね…」
と言っていた。
仕方が無く思っていた。
だが、今はどうだ。
あいつが無視をするだけで、更に評判が落ちた。
「無視はないだろ」と
精神がやられているのかもしれないのに、それを突き刺すように言う、
俺は別に気にしてなかったのに。
嘘だ。
嘘なんだ。
違う。あいつはやってない。
やるわけがない。
有名校バビルスの評判が落ちないように、あいつを退職処分にしたのはわかる。
もう少し、………犯人の言うことも聞いてあげなかったのかねぇ……
それこそバラム先生連れて行けば良かったじゃん…
なんで出張でいないんだよ…あんなときに、…っ…
なんで、………
戻って来いよ
なんでっ、…!!
そんなエイトを横目に、俺はずっと
落ち込んでいた。
左手に履いていた黒い手袋を口で加えて取り、そのまま左手を顔半分に持ってきて覆い、そう唱えた。
するとどうだろう、段々と顔が、キリヲが用意した資料の顔になっていく。
その左手のまま、笑ってしまう。
そう、もうどうしようもなく。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。