死ぬんだったら誰にも迷惑かけないように死にたいな…………………
だったら海に溺れて死んで、
無人島までたどり着くか
サメにでも食べられればいいかな。
それだったらいいのに…………
俺は海に向かった。
綺麗な夕日だった。
俺が死ぬ時にはもったいないようなほど。
眩しかった。
寺島くんの笑顔みたいだ。
ううん、もう寺島くんは忘れよう。
死ぬ時くらい、忘れてしまおう。
またあいつらだ。
やだ。
最期にそんな気分で死ぬのはいやだ。
でも、逆らえないし
助けも来ない。
俺は耐えるしかないんだ。
ごっっ
顔を殴られた。
今度も鼻血が出た。
ぐいっ
髪を引っ張られて砂浜に体を打ち付けた。
地味に痛い。
ごきっ
腕を思いっきり踏まれた。
音を聞く限り、
骨折っぽい。
口から血が出てきた。
自分でもびっくりした。
痛い。
やめてよ。
助けて。
てらじ…………
ダメだって、
来るはずないって、
夢見んなって、
ホントバカかよ。
大好きな声が聞こえた。
優しくて、
強くて、
大好きな声。
ごっ
寺島くんがあいつらを殴ってた。
初めて見た。
いつものおちゃらけた笑顔はどこにもなくて、
真剣な顔だった。
正直、怖かった。
あいつらは帰った。
ぎゅ
寺島くんは俺を抱きしめた。
俺はいつの間にかテオくんに戻っていた。
俺は我慢していたのに、涙がこぼれて、
ついには泣き出してしまった。
テオくんは優しく頷いてくれた。
だんだん落ち着いてきて、
ちゃんと喋れるようになった。
俺は無意識にタメだった。
俺、
やっぱテオくんが好きだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!