今いる黒焉街から近く、ちょうど小腹も空いた所なのでメロンパン屋に行ってみることにした。
それにしてもこの辺りでも有数の繁華街だからだろうか。客引きや柄の悪い人物がいつもより多く感じる。
絡まれていいことなど一つもない。できるだけ路地裏や客引きを避けて通るように気をつけた。
だがそれでも絡んでくるチャレンジャーもいるらしい。
明らかにコチラを見下しニヤニヤと汚らしい笑みを浮かべた男たちが退路を防ぐように私の前へ立ち塞がった。
これは……未成年だと思われている?
いや、それは流石に無いでしょう。
確かに私は身長が低いですし、メイクもしたことがありませんけれどそんな見間違えは……
そういえば私はあの院で働き出した以前の記憶がない。
実家が東北にあるというのも個人情報の書かれた資料を見て知ったことだ。本当に私が東北に住んでいて両親がいるのかも不明だ。
考えれば考えるほど、わからなくなってくる。
いきなり手を掴まれ勢いよく引き寄せられる。
さて、どうやって逃げようか。
引きずられつつそんなことを考えていると人混みがザワザワと騒がしくなっているのに気がついた。
人混みの中から出てきて男達の腕を掴んだのは紫の瞳に黒髪金メッシュの女性だった。
"ウチのシマ“と言っているから、多分この辺りを支配している極道“京極組”と関係があるのだろう。
そんなことよりも、先ほどから女性が掴んでいる男の腕から鳴ってはいけない音がしている。
あんな細い体のどこにそんな力があるのか。女性に殴られた男達は宙を舞い、地面へと倒れた。
女性は一息つき、こちらへ歩み寄りじっとこちらを見つめる。なぜかそらしてはいけない気がして、私も見つめ返した。
実際は一分にも満たない時間だけれど、何十分にも感じられるほどの間見つめあっていると急に女性がこんなことを言い出した。
本当に子供だと思われている?流石にそれはないはず……
嫌な予感が当たっていた。じゃああの男達も私を子供だと思って絡んできたのね。
あれは絶対に信じていない顔だ。こうなったらもうアレを出すしかない。
私はポケットを探り、保険証を取り出した。
彼女の身長が高いこともあり身長差が30cmほどあるので、よく見えるようにつま先立ちをしてカードを見せる。
この人私のことを知っているのかな……それよりも彼女が大声を出したせいで人が集まってきている。
こんなはずじゃなかったのに……早くメロンパン食べたいなぁ。
人混みを分けて道を進んでいく。たまに絡んでくる人がいたけれど持ち前の逃げ足で避けて通った。
少し遅くなったけど、メロンパン屋さん開いているかな。
今更プロフィール
○上堂新奈(かみどう にいな)
有名な(元)医者
低身長童顔なのでよく未成年に間違えられる
働き出した二十六歳以前の記憶が思い出せない
稀に人が変わったかのような行動や言動をとることがある。
○後畑雲母(ごはた きらら)
院長の娘
新奈をいじめていた
元は心優しい女性だったらしい
○五十嵐 雅(いがらし みやび)
京極組のお嬢
二つ名は【鉄扇のお嬢】
今更追記:ちょっとファンタジー要素含むでー














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!