嫌がらせは、日ごとにエスカレートしていた。
教科書に落書きをされたり、机の中に虫を入れられたり、陰口を叩かれたり。
私は、辛い日々を送りながらも逃げたら負けてしまうと思い、毎日、学校に通っていた。
そして、そんな日々を乗り越え、ついに一週間後の体育祭を迎えることになった。
体育祭の目玉は、何と言ってもクラス対抗のリレーだった。
特に注目を集めていたのは、黒瀬くんと吉川くんの対決だった。
二人は、それぞれ別のクラスの代表としてリレーに出場することになっていたのだ。
(…黒瀬くんと吉川くんの対決、楽しみだな…)
私は、少しだけ、心が浮き立った。
体育祭当日。
私は、いつもより早く学校に着き体育の授業で使う靴を履き替えようとした。
その時だった。
激しい痛みが足に走った。
驚いて靴の中を見てみるとそこには、無数の画鋲がびっしりと敷き詰められていた。
足の裏は、画鋲でズタズタになり、血がとめどなく溢れ出していた。
私は、震える声でそう呟いた。
その時、廊下を歩いていた吉川くんが私の異変に気づいた。
吉川くんは、低い声でそう言った。
私は、苦笑いをしながら吉川くんに説明した。
吉川くんは、彩桜を抱き上げ保健室へと向かった。
また、お姫様抱っこされてしまった。
私は、申し訳なさそうに謝った。
吉川は、少しイライラしながらそう言った。
(吉川くん、優しいな…)
私は、吉川くんに抱きかかえられながら胸がキュンとするのを感じた。
保健室に着くとそこには、保健係である瑠奈ちゃんがいた。
吉川くんは、私を瑠奈ちゃんの前に座らせそう言った。
瑠奈ちゃんは、血だらけの右足をブラブラさせている私と吉川の姿を見て、目を丸くした。
吉川くんは、ぶっきらぼうに説明した。
瑠奈ちゃんは、慌てて保健室を飛び出していった。
吉川くんは、ため息をつきながらも手当ての準備を始めた。
吉川くんは、優しく声をかけた。
私は、涙目になりながらも手当てを受けた。
突然、吉川くんがそう問いかけてきた。
私は、ドキッとした。
吉川くんは、冷たい声でそう言った。
私は、何も言えなかった。
吉川くんは、私の目をじっと見つめ、そう言った。
私は、驚いて聞き返した。
吉川くんは、そう言い残し彩桜の頭をそっと撫でた。
その言葉に私は、嬉しくて涙が止まらなくなった。
吉川くんは、困ったように微笑んだ。
体育祭当日。
私は、足の怪我のため体育祭に出場することができなくなってしまった。
(今日の体育祭、出れないのか…)
私は、しょんぼりとした気持ちで1階の教室の窓側の席に座り、体育祭を見学することにした。
(はぁ、結局、見学か…)
私は、窓から見えるグラウンドを眺めながらため息をついた。
本当は、黒瀬くんや吉川くんの活躍を間近で見たかった。
特に黒瀬くんと吉川くんのリレー対決は、絶対に見逃したくなかった。
(…まあ、嫌がらせされなくて済むだけマシかな…)
私は、自分に言い聞かせるようにそう思った。
昨日の今日でまた何か嫌がらせをされるかもしれないという不安は拭いきれなかった。
吉川くんに手当てをしてもらった後、瑠奈ちゃんが保健室の先生と担任の先生に事情を説明してくれた。
「ここまで酷いと対策を考えないといけないですね」
保健室の先生が真剣な表情でそう言ってくれた。
その結果、今回の件は、今度の職員会議で議題に上げられることになったらしい。
(少しは、状況が良くなるかもしれない…)
彩桜は、そう期待しながら体育祭の様子を見守った。
グラウンドでは、様々な競技が行われていた。
生徒たちは、汗を流し、声を張り上げ、それぞれの競技に全力で取り組んでいた。
そんな生徒たちの姿を見ていると私も少しだけ、元気が出てきた。
(私もみんなと一緒に体育祭を楽しみたかったな…)
そう思った瞬間、少しだけ寂しくなった。
その時、校内放送が流れ始めた。
「次は、借り物競争です!」
アナウンスの声がグラウンドに響き渡る。
彩桜は、放送を聞きながら借り物競争に興味を持った。
(…借り物競争、面白そうだな…)
グラウンドでは、借り物競争の準備が着々と進められていた。
生徒たちは、スタートラインに並び、今か今かとスタートの合図を待っていた。
(…頑張れー!)
私は、心の中で生徒たちにエールを送った。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!