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第15話

第15話 何も知らない明日へ
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2019/07/24 09:09 更新
委員長
点火カウントダウンするよ!
マイクを通して響く学園祭実行委員長の声。
後夜祭の目玉、キャンプファイヤーが始まる。
委員長
3、2、1……点火!
最初は小さく、だんだん大きくなる火柱。
キャンプファイヤーは、暗かった校庭を赤く照らした。
一条朔也
一条朔也
ジュース3本、貰ってきたよ!
大沢かおり
大沢かおり
それじゃあ、学園祭の成功を祝して……
倉野瑞穂
倉野瑞穂
かんぱーい!
学園祭実行委員として今日まで協力してきた3人は、お互いを労っていた。
大沢かおり
大沢かおり
大変なことだらけだったけど、達成感も大きいわね
倉野瑞穂
倉野瑞穂
そうだね。入学してからずっと仲良しのふたりと一緒にできて、本当によかった!
一条朔也
一条朔也
俺も、ふたりが一緒だったから楽しかったよ
一条朔也
一条朔也
あ、ごめん。俺、ちょっと先生にも挨拶してくる
少年は、離れた所にいる先生のもとへ駆けていった。
倉野瑞穂
倉野瑞穂
……かおり、朔也くんに告白しなかったんだね
大沢かおり
大沢かおり
瑞穂もね
倉野瑞穂
倉野瑞穂
抜け駆けはしないって、決めてたから
大沢かおり
大沢かおり
あたしも。朔也くんは好きだけど、瑞穂のことも好きだから
倉野瑞穂
倉野瑞穂
これからもライバルだね
大沢かおり
大沢かおり
そうね。この先、どんな運命になっても恨みっこなしよ!
キャンプファイヤーは、ふたりの少女が握手する姿を照らしていた。


倉野瑞穂
倉野瑞穂
あー、遅くなっちゃった。
あのふたり、先にお店に行ったかな?
学園祭が幕を下ろした翌日。
瑞穂は、待ち合わせをした本が読めるカフェに急いでいた。
倉野瑞穂
倉野瑞穂
そうだ。帰りに買うお菓子、リストアップしておこうっと
倉野瑞穂
倉野瑞穂
なんか……いつもお菓子をストックしておかないと落ち着かないのよね。
誰かが勝手に食べるわけでもないのに
ひとりごとをつぶやきながら歩いていると、向かいから他校の制服を着た少し派手目の少女が歩いてきた。
倉野瑞穂
倉野瑞穂
たまにこの辺で見かけるなぁ、あの子。
目立つから覚えちゃった
今日は、隣に母親がいるようだ。
仲良く話しながら、買い物といったところだろうか。
倉野瑞穂
倉野瑞穂
……?
一瞬、少女が自分に向かって微笑んだように見えた。
しかし、少女は瑞穂とすれ違うと、気にしないそぶりで歩き去ってしまった。


尚美の母
いいの?
声をかければ、またお友達になれるような気がするけど
柊尚美
柊尚美
いいの。
アタシと友達になったことで、運命が戻っちゃう可能性だってあるっしょ?
尚美の母
強いのね
柊尚美
柊尚美
強くはないよ。
瑞穂との仲をなくしたくないっていう甘えがあったから、あの一週間だけをしつこくループさせてたんだから
尚美の母
それにしても……まさか小学生まで時間を戻すなんて
柊尚美
柊尚美
アタシも、できるかどうか微妙だったんだよね。
そんなにも長い時間、さすがに戻したことなかったし
尚美の母
あなたはたいした子よ。
成功させちゃうんだもの
柊尚美
柊尚美
そのかわり、もうカラッポ。
1秒も戻せなくなっちゃった
尚美の母
その方がいいわ。
普通の子になったっていうことよ
柊尚美
柊尚美
ま、瑞穂は私のことを忘れちゃったけど、いいこともあったよ。
母さんを病院に連れて行くことができたし
尚美の母
小学生のあなたが、急に流ちょうに話し始めるからびっくりしたわ。
今すぐ病院に行け……って
柊尚美
柊尚美
それに、ほら……親友もできたから
尚美の母
ああ、あの男の子ね
放火の犯人であった少年は、ひどくいじめられていた。
そして、いじめの主犯格の自宅に火をつけるところまで追い詰められた。
その主犯格はすでに引っ越し、別人が住んでいることに気が付かず……。

尚美は、小学生まで戻った際、母親に全てを打ち明けた。
母を病から救った後、その少年がいる学校に転校した。
そしていじめから守り、親友となった。
今では、犯罪を嫌う心優しい少年だ。
柊尚美
柊尚美
ああ~!
明日が楽しみ!
尚美の母
そうね。明日からはいよいよ、あなたが知らない日々が始まるのね
柊尚美
柊尚美
やっと未来へ向かうことができるってこと。
アタシも……あの子たちもね
尚美は、後ろを振り返ってみた。
遠くに、先程すれ違った少女と、その友人2人が話しているのが見えた。
柊尚美
柊尚美
瑞穂……幸せになるんだよ

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