ぼくは静かに宣言した。
物書きは驚いた顔をした。
探偵も一瞬、眉をひそめた。
テディ――あの子は犠牲者じゃなかったのではないか。
夜の惨劇で倒れていたのは、罠だった。
血も、演出だったのかもしれない。
そう思った瞬間、ぼくの中で決意が固まる。
──投票は、生きている可能性のあるテディを含めた。
そのとき教室の奥の扉が、ギィと軋む音を立てて開いた。
そこに立っていたのは、テディだった。
血まみれの姿は、まさに幻のように見えた。
そして、笑っている――いや、笑っていない。
目が、何かを知っている光で光っていた。
「……ずっと、見てたよ」
テディは低く囁く。
「死んだと思ってた? 演出さ。全員を試すための」
物書きは動揺し、探偵は机を叩く。
「そうか……すべて計画通りだったのか!」
突然、割り込むように謎の声が再び響く。
『プレイヤーだけが、すべてを見抜いた。
ここまで辿り着けた者は、他にいない。
これが、“破滅学級”の真のゲーム――そして真実だ』
正解か不正解か…?
『……正解。よくやった、プレイヤー』
そして、黒板に文字が浮かぶ。
「犯人:物書き」
「テディは……生きていた」
「ゲームクリア。生存者:プレイヤー、探偵、」
胸を撫で下ろす。
静まり返った教室。
死の匂いと、虚無の空気だけが残っている。
テディは姿を消し、物書きは処刑された。
生き残ったのは、探偵とぼく――ただ二人。
探偵は椅子から立ち上がり、ゆっくりとぼくに歩み寄る。
足音が、床を鳴らすたびに心臓が締め付けられる。
その目は、冷たく、真実を見通すようだった。
胸がドクンと鳴った。
逃げ場がない。
空気が、急に重くなる。
探偵はぼくの肩に手を置き、ゆっくりと囁いた。
その瞬間、頭の奥で――
“あの声”がまた、囁いた。
『……もう、隠せないよ。ぼく。』
視界が揺れた。
天井も、床も、探偵の姿も――ぐにゃりと歪む。
黒板の文字が滲み、教室がひび割れていく。
ぼくは頭を抱えた。
『君は、プレイヤーじゃない。
この学級の“主催者”であり――
そして、ぼく自身だ』
探偵の声が遠くなる。
ぼくの口から、別の声が重なるように漏れた。
探偵は一歩、ぼくに近づき、はっきりと告げた。
目の前が真っ白になった。
頭の中で、ぼく、ぼく、ぼく……と声が反響する。
すべての記憶が反転する。
犠牲者たちの声も、笑い声も、恐怖も――全部、ぼくの中だった。
『この学級は、君の心の中だよ』
ぼくは、ゆっくりと顔を上げた。
探偵は変わらず、静かにぼくを見つめていた。
まるで――ぼくのもう一人の人格のように。
そして、世界は崩壊した。
黒板も机も、血も、犠牲者も。
すべてが、音もなく消えていく。
残ったのは――
“ぼく”と、“ぼく”だけだった。














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。