第4話

「投票」
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2025/10/23 10:00 更新
「投票まで、残り一時間」

黒板に浮かんだその文字を見た瞬間、教室の空気が変わった。
誰もが、隣の人間を疑い始める。
息を呑む音、机のきしむ音、時計の針が進む音。
すべてが、やけに大きく響いた。

探偵が机を軽く叩いた。
探偵
探偵
「まずは整理しよう。被害者は双子の片割れ。死因は毒。毒は薬師の薬。現場にはピエロの机の上にボトルの蓋」
ピエロ
「でも、あれだけでボクが犯人になるの?」
ピエロは仮面の下で笑いながら、肩をすくめた。
ピエロ
「もしかして……誰かがワザと置いたのかもしれないじゃない」
狩人
「言い訳だろ」
狩人
「こんなとき、笑ってるやつが一番信用できねえ」
先生が両手を広げてなだめる。
先生
「投票は全員の意見で決める。感情で殺すのは……間違いです」
だが、その声にも怒りと恐怖が混じっていた。
もはや「冷静」な人間なんて、この教室にいなかった。

薬師は目を伏せ、震えながら呟く。
薬師
「わたしの薬……ピエロしか、触れる場所になかった……」
予言者が静かに笑った。
予言者
「でも、“真実”は一つとは限らないよ」
ぼくは口を開けなかった。
視線を向けられるのが怖かった。
けれど――この投票で、誰かが死ぬ。
探偵
探偵
「では、始めよう」
探偵が立ち上がり、黒板の前に立つ。
その姿は裁判官のようで、そして処刑人のようだった。

「犯人だと思う者の名前を、一斉に挙げるんだ」



カチ、カチ……
時計の針が、死神のように刻む音を響かせる。

最初に手を挙げたのは狩人だった。
狩人
「俺は……ピエロだ」
薬師
「わたしも……」
赤ずきん
「うん、私も怪しいと思う」
死神
「……笑っている奴が一番怖い」
双子
「ピエロ……」
次々と、ピエロの名前が呼ばれていく。
仮面の下で、ピエロの口角が少しずつ、上へと吊り上がっていった。

ぼくの番がきた。
ぼく(プレイヤー)
ぼく(プレイヤー)
「……ピエロ」
黒板に刻まれた名前は、十五票中十二票が「ピエロ」だった。

探偵が黒板を指差す。
探偵
探偵
「決定だ。処刑対象は……ピエロ」
その瞬間、教室の床が鈍く鳴った。
机の脚のすき間から、黒い影が伸びる。
ピエロの足元に絡みつき、ゆっくりと、底なしの穴へと引きずっていく。
ピエロ
「やれやれ……“外れ”じゃないといいね」
黒板に新たな文字が浮かぶ。

「処刑完了――ピエロ:死」
「正解は……」



時間が止まったような静寂。
ぼくの心臓が、音を立てて跳ねた。

「……不正解」



その瞬間、教室中がざわめいた。
全員の顔が、ゆっくりと青ざめていく。
ピエロは犯人ではなかった。
ぼくらは――間違えたのだ。

黒板の下に、新しい文字が書き足される。

「間違えた罰として――一人、犠牲が出る」



闇が、再び床を這い始める。
まるで、次の命を舌なめずりしているかのように――。

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