(霊夢side)
紫のスキマで、永遠亭に着いた私たち。
突然の大勢の怪我人に、永琳と鈴仙はかなり驚いていた。
皆ボロボロであったが、私たちはあなたの治療を最優先で行うように伝えた。
声をかけても返事しないし…どんどん呼吸が…弱くなっていっていたから。
そして数時間に及ぶ手術により、あなたは…、
永琳からの言葉に、私たちは全員安堵して喜んだ。
永琳が少し暗い表情になり、全員固まって聞く。
手術を終えたあなたを病室に運び終えた鈴仙が、丁度戻ってきて言った。
鈴仙からの言葉に、一同は俯く。…でも、私は。
永琳は穏やかに笑いながら、そう言った。
…私は、いつまでも待ち続ける。
あの子が目を覚ました瞬間…平和な日常に皆で帰ってこられたんだって…思えるように。
…あれから、2ヶ月が経った。
あなたは未だに永遠亭のベッドで静かに眠っている。
…私は、この二ヶ月間あなたがいない博麗神社での生活をとても寂しく感じていた。
ご飯を食べるのも一人、
家事をするのだって一人、
縁側でお茶や茶菓子を嗜むのも一人、
…あなたと出会う前までは、こんなの当たり前だったことだったと言うのに。
…それほどあなたは、私にとって大きな存在だったんだなと、改めて気づかされる。
…私は毎日欠かさずあなたの見舞いに来ていた。
あなたの手を握り、あなたのほんの少しの変化も見逃さないように見守る。
そしてなにか面白い土産話があったら…聞こえていると信じて話す。
そんな二ヶ月間を送っていた。
ガラッ…
病室のドアが開かれる音がして振り返ると、
そこにはレミリアとフランのスカーレット姉妹、
そしてさとりとこいしの古明地姉妹がいた。
フランとこいしは私とここのところ行動は同じ。
姉のレミリアとさとりが来るのは珍しかった。
そんな会話をしてる間に、フランとこいしは私と向かい合わせになるようにあなたのベッド横に座って、私と同じように手を握る。
あなたの病室の窓に、さとりは見舞いの花を花瓶にいけて飾る。
そんな話をして会話が止まってしまって静かになる。
聞こえるのは心拍を計る機械の音と、鳥の囀りだけだった。
ガラッ
するとその沈黙を破るようにまた扉が開く。
来たのは、私の親友である魔理沙だった。
そう明るく言いながら、魔理沙は私の隣に椅子を持ってきて座る。
その言葉に私は、目を丸くする。
魔理沙はその実際の新聞を広げて見せた。
魔理沙からの話に、私達はプッと吹き出す。
自分の娘が、身内だけじゃなく世界に愛されてるとは思わなかった。
…私はそれを、嬉しく思った。
魔理沙のこの明るさには今は助かる。
正直先程までは全員しんみりしてしまってたから。
ガラッ
流れるように漫才のような会話をしながら入ってきたのは、キラ達五人組。
…そういえば、最初に友達と言うものになろうとしてくれたのはこの子らだったっけ。
レミリアからの言葉が図星なのか、紫霊はごまかそうとあからさまに目をそらす。
…なんか段々と、あの戦いで戦ったメンバーが集まってきたわね。
妖夢は幽々子のことで多忙だろうし…パチュリーも図書館か。
私は、あなたの手をまた握って語りかける。
談笑している皆にはうっすらとしか聞こえないであろう小さな声で。
…あぁ、やっぱりダメだ。
皆の前では、泣きたくなかったのになぁ。

私は涙を流しながらそう言った。
皆、私が泣いてるのがわかったのか、周りは一気に静かになる。
そして握っているあなたの手に、私の涙の雫が落ちたー。
…ぎゅ気のせいだろうか…今僅かにあなたの手が、私の手を握り返してくれたような…。
反対側の手を握っていたフランとこいしも、互いの顔を見合わせてそう言った。
…ということは、気のせいなんかじゃあないんだ。
皆がその言葉に反応して、あなたの顔を覗き込む。
一同『!!』
…開いた…!!…ついに、あなたの綺麗な瞳が…!!
ガバッ!!

するとあなたは急にハッと目を見開いて起き上がった。そしてゆっくりと、周りにいる皆や景色を見渡し始める。
皆笑顔になって、
涙を目に貯めながらあなたの目覚めを祝した。

一同『ギョッ!?( ; ロ)゚ ゚』
突然あなたは、固まって動かないまま涙をポロポロと流し始めた。
何粒か溢れた後にようやく自分が泣いてることに気づいたのか、頬に伝う涙に触れる。
(あなたside)
…あれ?
どこだ…ここ…。
たしか私は…ルシファーを…お母さんと一緒に封印して…その後に…血を吐いて…気を失っちゃって…。
…ダメだ、その後を何も思い出せないや。
『……。』なんだ…誰かの…声が聞こえる…?
そうだ…戻らないと…皆との約束を…守らないと…!!
そして私は気づいたら、
目の前に現れた一筋の光に手を伸ばしていてー。
ーポチャン
…なにか、水のようなものが手に垂れてきた感覚がして私は手に力を込める。
…私はなにかに…誰かに手を…握られている…?
そして段々とわかってきた。
私は今どこかのベッドに寝かされているんだと。
重たい目蓋を開けると、誰かが私の顔を覗いている。
段々と視界が鮮明になり、目の前にいたのは…
お母さん、フラン、こいしだった。
そしてよく見ると天井は前にも来たことがある…
永遠亭の病室の天井だ。
永遠亭…お母さん…フランと…こいし…。
………………………………………………………………………………………。
・・・ん?戻ってるの?幻想郷…に…!?
私はあまりの事態に混乱して、思わずガバッと起き上がる。
突然起き上がって当然驚いたのか、周りにいる魔理沙さんやキラ達は口を開けて驚いていた。
が、すぐに安心したかのような穏やかな表情になり…
…皆、私が目を覚ましたのを喜んでくれている。
…そうか、私は戻ってこられたんだ…。
私がずっと望んでいた皆と笑い会える平和な日常に。
…私はまだ、夢を叶えられるんだ。
…私はまだ、皆と笑い会えるんだ。
…私はまだ、生きているんだ。
すると皆が、私の顔を見て固まった。
そしてなにやら急にオロオロと慌て始める。
すると、視界がぼやけたと思ったら、
頬になにかが伝うような感覚がした。
そう、まるでキラ達と初めて出会ったあの時みたいに
…だけど今だけは、これがなんなのかも、これを流している理由も…あの時とは違ってハッキリとわかる。
…本当はすぐに答えたかった。
どこか痛くて泣いてるんじゃないんだって。
だけど…胸が段々熱くなっていって…しゃくりあげてしまって…うまく声が出せなくて…ついには…。
情けない声を出しながら、泣き出してしまった。
涙で視界が悪くなってるけれど、
皆が更にあわてふためいてしまっている。
私はなんとか声を出して言い始める。
私はしゃくりながら、涙を必死で拭いながらなんとか声を出した。
私はついに、医療施設の中だというのに、皆がいるのに泣き叫んでしまった。
そう言ってお母さんは、私を優しく抱きしめる。
そして暖かい手で、頭を優しく撫でてくれる。

次回
“真相解明編”、開幕ー。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。