第164話

元、一般兵ショッピ
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2023/08/10 01:48 更新
上官「今回の任務はプロタゴニスト国への潜入、情報の奪取、そして反逆者の殺害だ」
ショッピ
はい
上官「反逆者の中にはプロタゴニスト国の幹部であり元王族…コネシマがいる」
ショッピ
そうですね
上官「あの方も殺害対象だ。お前なら、やってくれるだろ?」
ショッピ
はい
後ろで掴んだ手首の1ヵ所を軽く押す。ずっと前からある、そこに入った盗聴機の固さを忌々しく思いながらも、上官の命令に従う。
入隊試験の筆記はてんで駄目だったけれど、実技試験でそれなりに上位の順位に入ることで合格をもぎ取り、軍人として働きながら重要性のない情報を送る。怒りのメールなんて知ったことじゃないね。このまま出来るだけ長く俺はここで生きるんや。その後殺されるんなら、諦めもつくやろ。
さて、そんなこんなで数ヵ月がたったんですけど
コネシマ
お前を俺の隊に引き抜く
ショッピ
……(下手なこと言えないので沈黙)
なーんでこんなことになってるんでしょうね
ここは食堂、周りの隠密部隊の同期達は既に避難済みで、好奇の目に晒される俺。
ショッピ
隊長の許可なくそう言うことは…
コネシマ
許可ならある、総統も了承した
そういえば、自分の隊のスパイを報告すると褒賞金が出るんだったな、俺はそのために異動させられるんか…?
ショッピ
しかし…
コネシマ
お前は近接も得意だろ。さっさと来い
無理矢理手を取られ、席から引きずり下ろされる。反対の手を伸ばして必死に机を掴むが、固定されていない机は簡単に倒れ手からはなれていく。
その机が倒れるけたたましい音で緩んだ、コネシマさんの手を押し退け、食堂を飛び出した。
あのままでは、コネシマさんに泣きついてしまいそうだった。
頭の中で、俺が叫ぶ
『もう嫌だ、ずっとここにいたい、戻りたくない』
上官が、仲間の幻影が叫ぶ
『裏切るな、恩を仇で返すな、能無しは殺す』
重要な情報を盗ることも、かつての仲間を殺すことも出来ない
助けを求め、行動をすることも出来ない
祖国を裏切ることも、今を壊すことも出来ない
生きることが後ろめたく、死ぬことも恐ろしい
ただ冷めていくぬるま湯に浸かっているようだった
かけ込んだトイレで、洗面台にもたれ掛かる。目の前の鏡に眼を向けると、ずいぶんと血色の悪い自分がいた。
(あぁ、腹減ったな)
考えを別のことに移し、現実逃避をする。今考えて分からなければ、明日の俺が頑張ってくれる。明日の俺が分からなければ、明後日の俺が頑張ってくれる。
昨日や一昨日の俺と同じように未来の俺にすがる。
なんの解決にもならないと知っていながら見ないようにしてしまう。
その後、ずっと喫煙室の中で煙草を吸っていた。煙草がなくなっても居座り続け、今日の訓練を全部サボった。
喫煙室のすみで三角座りをして、膝の間に顔を埋める俺がどれだけ滑稽だったかは知りたくない。ただ、俺らの軍の規則「踏み込まない」がここでも働いてくれるお陰で、誰も俺に何があったのかは聞かない。顔を上げると、お地蔵さんよろしくお菓子やジュース、煙草の箱なんかが置いてあるだけ。
その中の煙草の一つが目に入った。
ショッピ
ショート、ピース…?
忘れるはずもない。コネシマさんが俺の名前に似てる、というだけですすめてきた煙草。俺の名前を知ってる人が連想して置いていったのかもしれない。
けど、
けど!




掴んだ開封済みの煙草の箱の中には、数本の煙草が入っているだけだった。
ゾム
ショッピくん、コネシマんとこに行かせる書類サインしてまってごめんな?
ショッピ
いえ、大丈夫です
あの後、俺は部屋に籠り気味だった。それを心配した隊長がわざわざお見舞いに来てくれたらしい
ゾム
アイツ、強引なとこあんねん。書類は取り下げてきたから、もう行かんでええんやから、せめて訓練には参加してくれへんか?
ショッピ
………
ゾム
ショッピくん、あんな、ルール知っとるやろ?軍の規則の。俺は…俺らはな、求められんと助けられへんのや
ショッピ
それは隊長に後ろめたいことがあるからでしょう。
ショッピ
俺にはありません。俺は…
ショッピ
俺はただ気分が優れないだけです。よくある夏バテですよ。
ゾム
…そう、そっか…なぁ、ショッピくん
ベッドで上体を起こした俺の両肩を、隊長が遠慮がちに掴む。
ショッピ
なんでしょう
ゾム
……何も感じなくなるのは、危ないで。やから、ちゃんと逃げるんやで?もし、何があっても…任務失敗しても。ショッピくんが無事でいてくれれば、俺はそれが一番嬉しいから
ショッピ
………
ゾム
国や、仲間は大切かもしれない。それに自分をなげうって戦えるのは良いことやとも思う。けど、それを仲間は喜ばない。ショッピくんが生きて、俺らも生きてて、プロタゴニスト国で皆が…ショッピくんも、俺も笑ってる。それが一番の幸せや。
お互いどんなものを抱えてるのか分からんような奴らやけど、それでも、仲間やってお互い信じとる。何かがあったら助け合うって
隊長の眼は、どこか遠くを見ていた。俺を見ながら、他の者を見ている。
ゾム
ちゃんと、しんどいって、つらいって、もう嫌だ、逃げたいって、言わなアカンで?言ってくれな、俺は助けられへんのや。だから、だから…
隊長の普段は隠れている目が目の前にある。いつもは吊り上げられた口角がへの字にまがり、口調は懇願するような形に変わっていく
ゾム
助けてって…言ってや…
隊長は肩にのせた手に頭をのせ、小さな、消えそうな声でポツリとこぼした。
そんな隊長に感情も引っ張られたのだろうか、涙がこぼれた。けれど、あくまで平静装う。もし、聞かれてしまったら祖国の非国民リストに俺の名前が載ることになる。


俺はぼろぼろ泣きながら隊長を押して離れてもらった。
ショッピ
大丈…夫です
ショッピ
俺は…大丈夫、です
ショッピ
大丈夫なん…です…
震える声を必死に止めながら、大丈夫と言う。
ショッピ
だから、離してください…
ゾム
…わかった
納得のいかない表情のまま、隊長は離れていく。当然だ。こんなに泣いていては、隠し事をしていると言ったようなものだ。ベッドに潜り込んで、体を丸める。隊長の扉を閉める音が大きめに部屋に響いた。
何もしないで欲しい。俺のことはその辺にいる兵士と同じように、驚異でも一目置くほどでもないただの兵士として放っておいてほしかった。
ショッピ殿へ
貴殿を幹部へと昇格させることが会議により決定された。速やかに荷物をまとめ、仕事の引き継ぎをするように。これは決定事項である。
ショッピ
…マジか
ショッピ
(何で俺に…そもそも、ゾム隊長やコネシマさんはなんで止めんかったんやろうか…)
コネシマ
おう!ショッピくんよう来たな!
ショッピ
なんで俺がアンタのとこ行かなあかんのや!
コネシマ
まぁまぁまぁ、ええやん?ほら、お前ら。コイツが俺の近接隊A班で副班長してくれるショッピくんや。仲良くしろよ?
大先生
あ、ショッピくん
ショッピ
大先生やないですか。どうも
大先生
仕事馴れてきたみたいやね、喧嘩はしてるみたいやけど…楽しそうやし、止めんでええんよな?
ショッピ
まぁ、はい。楽しいです
大先生
ん、喧嘩すんのは構わんけど、殺さんようにな
ショッピ
はい、

ショッピ
もちろんです
あぁ、今の俺は上手く笑えているだろうか

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