あなたside
どんっ
そんな鈍い音がなったと思うと後ろに倒れそうになった。
私は反射で目をぎゅっと瞑った。
そう聞こえたかと思うと、背中を支えられる。
瞑っていた目を開くと、いかにも優しそうなお兄さんが立っていた。
なんだか、落ち着いていて、懐かしい声。
初めて見たはずなのに、何故かどこかで見たことのあるような笑顔。
頬を赤らめながらはにかんだ顔が、何処か懐かしくて涙が出てきてしまいそうだった。
ほんの少し、下を向いて言ったその人。
なんだか悲しそうで、寂しそうで
私も少し下を向いていて、
彼の顔を見ようと顔を上げると、彼がキョトンとしているから
自分の言った事が恥ずかしく思えてしまって。
急に弾けたように笑うあなたが、とっても綺麗で
見たことがある、と何故か思ってしまった。
たくさんお喋りをして、たくさん時間が経ってしまった。
そんな他愛のない会話をして、さよならをする
彼が少し遠くにいってしまってから気付く。
とんでもなく大きい声で叫ぶ。
すると、歩いていた彼は一度立ち止まって何かを言った。
けれど、たくさんの人の声や音にかき消され、聞こえない。
そうつぶやいて家へ帰った。
またこの夢……
私はまだ眠っている体を無理矢理起こして朝食を取りに行く。
カラン、朝食用に用意されたフォークがテーブルから落ちた。
バタンとパパが出ていった音がした時に、一気に記憶が流れ込む。
乙骨優太との記憶。
少し違うけれど、その言い方がピッタリなお別れの仕方。
もう貴方はこの世界には居ないけれど、それでも
涙が止まらなくて、助けられたら、なんて。
貴方も、こんな気持ちだったのかな、なんて。
私の言葉が宙に浮いて、泡みたいに消えていった。
さよならの言葉は、私をあなたに執着させる。
END











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。