彼方も覗き込み、目を丸くする。
火種。
その言い方に妙に引っかかった。
俺の胸に、僅かな不安が生まれた。
昨日の感覚が蘇る。
腹を貫かれ、死を受け入れて、
そのあと、燃え上がった力。
あれは確かに炎だった。
けど、ただ熱いだけじゃなかった。
心臓を直接燃やされるような感覚
理屈じゃなく「生きろ」って命令されたみたいな。
胸がぞくりとした。
恐怖ではない。
もっと違う…得体の知れない期待と恐怖が、俺の心にはあった。
風音が少しだけ微笑んだ。
冗談みたいなセリフなのに、空気は重くなる。
彼方だけがいつものテンションで俺の肩を叩く。
その言葉が妙に胸に刺さった。
俺は息を吸い、髪で指をつまんだ。
静かに、でも確かに心が決まった。
ふと、昨日の違和感と結びつく記憶が頭に浮かんだ。
その名前を口にした瞬間、二人の表情が少し変わる。
記憶を探すような顔。
俺は答えず、代わりに髪を指先で摘んで光に透かす。
普段はただの白い筋。
だが、
昨日、確かに赤かった。
炎の赤。
血の赤。
生と死の境界の赤。
胸の奥がざわつく。
風音が息を呑んで囁く。
俺は小さく笑う
風音が明るくそう言ったが、俺と彼方は目を見合わせる。
風音の表情が少し曇る。
彼方がそれを捕捉する。
風音が大きく目を見開く
俺はゆっくり息を吸う。
思い出したくない記憶のように、胸が重くなる。
穂乃果が笑顔で隠していた、あの孤独を思い出す。
風音が息を呑む。
驚き、そして少しの同情。
その反応に、俺は小さく言葉を足す。
風音も苦笑する。
だけど、俺の頭にはひとつの確信が浮かんでいた。
穂乃果のあの能力は、
ただの氷じゃない。
ただの生まれつきでもない。
俺の炎とは違う方向から、
同じ場所に向かって進化しているような、そんな感覚。














編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。