秋が去りつつある。
長袖一枚だけじゃ肌寒くなってきたということで、
鍋パーティーをするらしい。
村宮の家で。
和田と三浦がダイニングの方で鍋の準備をしている間、
俺と村宮はキッチンで
具材を切る役目を担ったわけだが……。
目の前に鎮座する六本入りのみたらし団子。
鍋用の具材の中に混じっていること自体
おかしいと思っていたが、まさか……。
鍋に入れる気満々だったらしい。
あほかこいつ。あほなのか。
本来鍋に入れるべき野菜やキノコを切っていると、
後ろで冷蔵庫が開く音が聞こえた。
そう言った和田の手にあるのは、麦茶のペットボトル。
美味しいはずの鍋が一歩間違えたら闇鍋になりかねない。
俺が食べ終わるまで気ぃ抜けんな……。
その後はどうなってもいいわ、もう。好きにしてくれ。
先ほどから鍋の前に座ったまま、まったく動かない三浦。
何だあいつ。亭主関白かなんかなのか。
集合時間は午後四時だった。
夜ご飯にしては早い時間だと思ったが、
普段料理しない俺らが鍋をするなら時間がかかるだろうし、
妥当だとさえ思っていた。
今は午後五時半。
おおよそ時間通りだが……いや待てよ。
祖父母の家にいるのなら、
夕食の時間が早いのは理解できる。
俺のじいちゃんも、この時間に食い終わってるし
寝るのも早いし。
ダイニングテーブルに座って、
やんややんやと鍋をつつき始める。
俺の目の前に座る村宮は美味しそうに餅を頬張ってるし、
隣の三浦は和田と言い合いしながらも
自分の皿に次々と具材を入れていく。
俺も自分の皿に取り分けた野菜とキノコを
いっしょくたに口に放り込んだ。
寒い日の鍋はやっぱりうまい……そう思っていた矢先。
先ほどまでのさっぱりしたつゆの味を邪魔するように、
甘ったるい何かが口の中に広がる。
とろとろしたこの感じは……まさか……
村宮の傍には、残り四本になった
みたらし団子のパックが置かれていた。
くっそ目を離したすきに……!
あぁ……俺はスタンダードな味の
鍋が食べたかったのに……。
みたらしの味が邪魔して口の中で暴れまわってる。
……なんであいつら普通に食えんの。
俺がおかしいのか……?
みたらし鍋が好評だったのが嬉しいのか、
テンションが爆上がりした村宮は
いろんな話を一人でし始めた。
和田が相手してるしいいか、と
自分の手元にあるみたらし鍋と戦っていると、
何かを思い出したように村宮が声を上げた。
三浦が口をもぐもぐさせながら無言で村宮を見ている横で、
俺は思わず声を漏らした。
いやだって、もうすでに漫才みたいな
やりとりしてるじゃねぇか、普段から。
傍観を決め込もうとしたが、流れ弾を食らった。
巻き込まないで欲しい。
村宮の興味はもうすべて漫才にあるらしく、
話の軌道を変えられそうにない。
飽きるまで待つか、と再び手元の味と格闘を始める。
ついには立ち上がり始めた村宮に、三浦が熱く指導する。
三浦お前……そんな大声出せたのか……。
普通の鍋だろうがみたらし鍋だろうが関係ない。
そもそもこの面子がそろって
落ち着いて飯なんて食えるわけがないのだった。















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。