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第25話

凱旋
1,397
2023/04/12 11:00 更新
葵衣
葵衣
じゃあ行ってきます
祖父
ん。気を付けろよ。
……朝から元気な奴だ
じいちゃんに見送られながら家を出る。
家の前でぶんぶんと手を振っている相手に向かって、
足を速めた。




周
みてみて! 桜とれた!
司
すごいじゃん。願い事した?
周
した! みんなと一緒のクラスに
なれますようにーって!
葵衣
葵衣
願い事って
口に出したら叶わないんじゃねぇの?
周
えっ……!?
成也
成也
もっかいやな
桜が散り始めた道を、俺は賑やかな音と共に歩いていた。
去年は一人で歩いた道。
そして、賑やかな日常がスタートした道。
司
はー、もう三年生か~。
最終学年ってそれだけで疲れちゃう
葵衣
葵衣
勉強の年だな
司
ね~……宮ちゃんの嘆き声を
何回聞くか数えとこっか
葵衣
葵衣
暇人か
司
これも思い出じゃん? セッチはどうする?
何回舌打ちしたかにしとく?
成也
成也
チッ
周
あおいー!
和田と三浦の会話を聞きながらあくびをしていると、
名前を呼ばれる。
その瞬間、頭上から降ってくる桜の雨。
葵衣
葵衣
うわ! ちょっ……おい!
周
いっぱいとれたからお裾分けー!
後ろを振り向くと、さっきまで桜を取るのに
奮闘していた村宮が立っていた。
司
わぁ、動画撮っとけばよかったね
成也
成也
頭が花畑やな
葵衣
葵衣
あ?
司
花びらたくさんついてるからね
葵衣
葵衣
あぁ
ストレートに悪口言われたかと思った……。
頭を振って髪についた花びらを落していると、
村宮から残念そうな声が飛んでくる。

いや、花びら付けたまま学校行くやつがいるかよ。
司
たくさんとれたんだねぇ
周
うん! 頑張っちゃった!
和田に褒められたからか、たくさんとれたからか、
はたまたその両方か。
村宮は随分嬉しそうな表情だった。

朝から幸せそうで結構なこと。
司
まさか宮ちゃんも
進学選ぶとは思わなかったなぁ。
もうちょっと悩むと思ってた
周
へへ、ね。
僕もぎりぎりまで答え出ないと思ってたよ
周
まぁ、まだ行きたい学校には
手が届かないけど……
葵衣
葵衣
志望校どこにしたんだ?
周
内緒!
葵衣
葵衣
は?
司
ボクらにもまだ教えてくれないんだよね~。
手が届くようになってから! って
成也
成也
一生教えてもらえんかもな
周
えー! がんばるから! 頑張るよ!
司
ボクも力になるよ~宮ちゃん♡
葵衣
葵衣
お前は早く自分の行きたい大学選べよ
司
え~、じゃあまた先生に
人生相談乗ってもらっちゃお
葵衣
葵衣
お前のは人生相談じゃなくて雑談だろ
司
それでいいんですぅ~
春休み、嘆く村宮から呼び出しを食らって家に行くと、
村宮は涙目になりながらも本当に勉強していた。

聞けば、大学に行くために勉強を始めるのだと言う。
環境からして進路については
しばらく悩むだろうと思っていたが、
何がきっかけになったのか、
村宮は驚くほどのスピードで前を向いた。
周
つかさ! クラス表見に行こう!
司
はいはい
学校も近付いてきたところで、
村宮が待ちきれないとダッシュする。
その後を、ゆるゆると和田が追っていった。
成也
成也
朝から元気やなぁ
葵衣
葵衣
じいちゃんと同じこと言ってる
成也
成也
せやろな
葵衣
葵衣
三浦は? 大学どうすんの?
志望校決まったか?
成也
成也
んー。オレもまだ保留やな。
焦ることないやろ
葵衣
葵衣
そんなもんなのか
俺は早い段階で目指す大学を決めていたから、
保留にするという考えはなかった。
でも、最悪夏前に決まっていればいいと
先生も言っていたっけ。
成也
成也
村宮の志望校は大体予想つくけどな
葵衣
葵衣
え? そうなのか?
成也
成也
和田も知ってるんちゃう?
葵衣
葵衣
……そうだな、あいつは知ってそう
三浦もわかっているとなれば、
確実に和田も知っているだろう。
アイツは村宮に対してそういう気持ち悪さがある。
過保護というか、執念深いというか。
葵衣
葵衣
大学に行っても変わらなそうだな
成也
成也
まずはこの一年を過ごしてからやろ
葵衣
葵衣
確かに。気ぃ早すぎたな
周
あおいー! せいやー!
三浦と話しながらだらだら進んでいると、
村宮が校門から顔を出して手を振ってくる。
その横には、しっかり和田もいた。
周
きいて! 奇跡が起きたの!
待ちきれなくなったのか、こちらに向かって走ってくる。
村宮に腕を取られ、そのままぐいぐいと引っ張られた。
葵衣
葵衣
いてぇ! 引っ張んなよ!
周
ほら! みて! 二組のとこ!
勢いよく連れてこられたクラス表が貼ってある掲示板の前。
人波をかきわけ、一番前へ押し出される。

言われた通り、二組の欄に目をやると、
一番最初に俺の名前。
下を辿って行けば、三浦、村宮、そして和田の名前も。
周
同じクラス! 四人とも!
村宮の声を聞きながら、横を見る。
嬉しそうに俺の肩に手を付いて
飛び跳ねる村宮の嬉しそうな顔が、間近に見えた。
周
やったねあおい! 同じクラス!
嬉しさを素直に出す村宮に
何か言い返そうとしているうちに、
はやく教室行こう! と再度手を引っ張られた。
司
嬉しいねぇ宮ちゃん
周
うん! すっごい嬉しい!
昇降口に向かう村宮の背中が、勢いよく振り向く。
無邪気な笑みを溢す村宮の顔が、真正面に来た。
周
また一年、あおいに
親友チャレンジが出来るんだね!
それは、まるで初対面の時と同じよう。
一年前を思い出させる村宮に、俺も思わず笑みがこぼれた。
葵衣
葵衣
また今年も疲れそうだな

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