じいちゃんに見送られながら家を出る。
家の前でぶんぶんと手を振っている相手に向かって、
足を速めた。
桜が散り始めた道を、俺は賑やかな音と共に歩いていた。
去年は一人で歩いた道。
そして、賑やかな日常がスタートした道。
和田と三浦の会話を聞きながらあくびをしていると、
名前を呼ばれる。
その瞬間、頭上から降ってくる桜の雨。
後ろを振り向くと、さっきまで桜を取るのに
奮闘していた村宮が立っていた。
ストレートに悪口言われたかと思った……。
頭を振って髪についた花びらを落していると、
村宮から残念そうな声が飛んでくる。
いや、花びら付けたまま学校行くやつがいるかよ。
和田に褒められたからか、たくさんとれたからか、
はたまたその両方か。
村宮は随分嬉しそうな表情だった。
朝から幸せそうで結構なこと。
春休み、嘆く村宮から呼び出しを食らって家に行くと、
村宮は涙目になりながらも本当に勉強していた。
聞けば、大学に行くために勉強を始めるのだと言う。
環境からして進路については
しばらく悩むだろうと思っていたが、
何がきっかけになったのか、
村宮は驚くほどのスピードで前を向いた。
学校も近付いてきたところで、
村宮が待ちきれないとダッシュする。
その後を、ゆるゆると和田が追っていった。
俺は早い段階で目指す大学を決めていたから、
保留にするという考えはなかった。
でも、最悪夏前に決まっていればいいと
先生も言っていたっけ。
三浦もわかっているとなれば、
確実に和田も知っているだろう。
アイツは村宮に対してそういう気持ち悪さがある。
過保護というか、執念深いというか。
三浦と話しながらだらだら進んでいると、
村宮が校門から顔を出して手を振ってくる。
その横には、しっかり和田もいた。
待ちきれなくなったのか、こちらに向かって走ってくる。
村宮に腕を取られ、そのままぐいぐいと引っ張られた。
勢いよく連れてこられたクラス表が貼ってある掲示板の前。
人波をかきわけ、一番前へ押し出される。
言われた通り、二組の欄に目をやると、
一番最初に俺の名前。
下を辿って行けば、三浦、村宮、そして和田の名前も。
村宮の声を聞きながら、横を見る。
嬉しそうに俺の肩に手を付いて
飛び跳ねる村宮の嬉しそうな顔が、間近に見えた。
嬉しさを素直に出す村宮に
何か言い返そうとしているうちに、
はやく教室行こう! と再度手を引っ張られた。
昇降口に向かう村宮の背中が、勢いよく振り向く。
無邪気な笑みを溢す村宮の顔が、真正面に来た。
それは、まるで初対面の時と同じよう。
一年前を思い出させる村宮に、俺も思わず笑みがこぼれた。















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。