第122話
121 次の約束
私の言葉を聞くと切れた電話。
…関係ない。
そう思いスマホをポケットに入れた。
何故か、3人が居る所には戻りづらくて1人で川沿いを歩く。
今、きっと仮面がしっかりと効力を発揮しているのだろう。
頭が痛みだし、薬がない事を後悔しながらその場に座り込んだ。
そのうち落ち着くだろう。
頭痛の原因を考えないようにすればする程、ズキズキと音は激しくなる。
軽く怒っているようだが、特効薬の登場に少し安心した。
私の横に座り顔を覗き込む彼女。
頭痛がしている事を察したのか、私の手をギュッと握ってくれる。
彼女の声が頭の中で響き、頭痛が和らいでいく。
「大丈夫」という意味を込めて、握られた手に軽く力を入れた。
まだ心配そうな表情に、少し微笑んで「大丈夫」と伝えれば、やっと笑顔になってくれた。
けど、その笑顔は寂しそうで…
太陽が川に反射して光っているのも相まって、彼女の儚さが増していた。
私の肩に、遠慮気味に置かれた頭。
「すぐに会える」
そう言ってあげたかった。
けど、言えない自分が居た。
ただでさえ忙しい彼女と、仕事漬けの私。
次いつ会えるかも分からない。
約束なんて出来ない。
時間は止まる事を知らない。
だからこそ、今一緒に居る時間を大切にしたい。
時計を確認すれば13時前。
限られた時間は、あと6時間。
とても小さな声で伝えられた彼女の願いに体が反応する。
差し出した手をゆっくりと取る彼女。
来た道を戻れば、サナさんとジヒョさんが見えた。
サナさんの言葉に、一言謝罪をし帰る事を伝えればすんなり受け入れてくれた。
2人で居れる場所…
彼女達の宿舎だと、他のメンバーがいるし…
外もなー。
人が多い所だと彼女の立場上、良くない気がする。
…あまり乗り気にはなれないけど、あそこしかないか。
運転中、2人になれる場所をひたすら考えていた。
思い浮かんだのは一ヶ所。
彼女達の宿舎前。
サナさんとジヒョさんが先に後部座席から降り、続いて降りようとしている彼女の腕を引っ張った。
彼女の腕を持ったまま、窓を開け外にいるサナさんに声を掛ける。
とびきりの笑顔で手を振るサナさんに一礼をして、車を走らせる。
数十分後。
着いた場所に、彼女は戸惑っていた。