きゃぴ、なんて効果音がつきそうな顔で俺をみる。
「…だまされんぞ」
ちっ、なんて舌打ちを聞き流しながらぼーっと借り物競争を眺める。
その中の一際目立つ顔立ちをみていると隣から小太郎が話しかけてくる。
「ふーん、あの顔が好きなんだぁ」
「なっ、違うわ!」
「えー、でもあの人の顔嫌いじゃないでしょ?」
「……ノーコメント」
「友達になりたい?」
「…えーわ、お前だけで充分。」
人付き合いなんて得意か不得意で言われれば圧倒的に不得意で。
友達の多い小太郎からしたらそこら辺の人はもう友達で、いつの間にかふらっと居なくなって友達を作って俺のところへ戻ってくる
「俺はお前と違って人付き合い苦手なもんで。」
そう言い残して、放送に促されるままリレーの列に並んだ。
「振り回されてんな」
「…あんたのせいだよ。」
「おー、先輩にため口か?あ?やんのか?」
「やらない。僕保健室行ってくる」
「どこも怪我してねぇだろ」
「やなんだよ、清春が格好いいとか言われてるの聞くの。」
「なんのために友達増やしてんのかあんた知ってるでしょ」
知ってるよ。
アイツに小太郎だけをそばに置かせる為って。
「…あれ、小太郎は?」
「保健室」
「…怪我、してました?」
「さー、いくら仲のいい幼馴染みにも話せないことがあるんじゃないですかー?」
「……」
ありがとうございました。なんて小さな声で言い残して、保健室の方向へ走っていった。
「…さっきリレー1位でゴールしたばっかなのに息切れもせず帰ってくるとか相当だろ、」
「だから見たくないのねー、小太郎くんは。」
▽
「…小太郎?」
「あれ、なんで分かったの?」
「…あの人に聞いた」
「あの人、…ああ、ニキ」
「ニキ?」
「市川君の事だよ。同級生でしょ?」
「…そうやけど」
「えー、同級生にも人見知りするの?」
「ほんとに僕だけじゃん!笑」
「…最初から小太郎だけでいいっていっとったもん」
「もん、」
「…お前は俺じゃなくてええかもしれんけど俺は…お前としかろくに話せへんの知っとるやろ、」
「…あの人だって、小太郎となかええし」
「…市川くん?」
「…その人しかおらんやろ、お前が一番なかええ人…、」
「えっ、ちょっとまって、なんで泣いてるの?」
「ぐすっ、泣いてない…っ」
「ごめんね?僕がなんか嫌なことしたんだよね?」
「…こたが、いちかわくんとなかよくするから、ぐすっ、…おれ、どんどんこたにとってひつようなくなってく、ぐすっ」
「…え?」
「清春は、市川君の事が好きなんじゃないの?」
「ちがう、」
「…え、嘘でしょ、?今日だって借り物競争の時市川君の事ばっかみてたじゃん!」
「それは…、こたのことひとりじめして、ずるいなって…おもっとっただけやもん…」
「え?は?わけわかんない、」
「…こた、おれのこと、も、きらい?いらん、なった、?ぐすっ」
「それはない。」
「僕が一番なかいいのも大好きなのも清春だけだよ?」
「ほんま?ほんとに、おれだけ?…おれがいちばん?」
「そうだよ。清春がいちばん。」
「へへ、…おれも、こたがいちばん、すき…」
「え、嘘でしょ!?今寝る?!」
抱き締めた腕のなかですぅすぅ、と小さな寝息が聞こえる。
「…まぁ、いっか。」
「おやすみ、清春。」
僕よりほんの少し小さな体を抱き上げてそっとベッドに運んだ。
次もよろしくお願いします🙇
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。