第49話

別れ
347
2023/10/03 09:00





後から到着した車からあなたが出てきた。




…服装の趣味が、かなり変わっている…?


太腿が見える黒のタイトワンピースに、黒のヒール。

毛皮がたくさん使われた真っ白のロングコートを羽織っている。


あなたはいつもパンツスーツ姿で、

派手な格好は好まないんだと思っていた。



…まあ、そんなことはどうでもいい。





この男たちはあなたが所属するマフィア、


コンストリクターの一員なんだろう。




久しぶりの再会を喜ぶわけにはいかず、


僕は再び、身を隠す。





クラウス
クラウス
(まぁ、あなたには気付かれているだろうが…)





その後、あなたがガラス戸を蹴破り、


単身で店の中へ乗り込んだ。




その後、数分で店から出るあなた。


右手で店主を引きずり、左手には何かの資料が握られている。




あなた
私はこの後用事があるから、
あなた
これ持って先に行ってて


店主と資料を男に押し付け、歩き出した。

マフィアの人間
ですが…

あなた
いいから



渋々といった様子で男たちは車に乗り込み、


何処かへ帰っていった。








目立たない場所へ移動したあなたを、距離を保ちながら追う。



あなた
……いるんでしょ

クラウス
クラウス
やはり気付いていたんだな
クラウス
クラウス
随分、雰囲気が変わったんじゃないか?

あなた
…私のボスの趣味
あなた
私の事、着せ替え人形だとでも思ってるみたい
あなた
そんなことより、もっと他に
話しに来たことがあるんじゃないの?



わざわざ着いてきたくらいなんだから、と、あなたは言う。

クラウス
クラウス
…あなた、何があった

あなた
何も、元の場所に戻っただけ

クラウス
クラウス
嘘だな

あなた
それも嘘
あなた
あんたは私の嘘を見抜けない

クラウス
クラウス
そうだな
クラウス
クラウス
あなたは嘘を吐くのが誰よりも上手い
クラウス
クラウス
僕でさえ見抜けない

あなた
わかってるならどうして…

クラウス
クラウス
直感だ




少し固まって、肩をすくめるあなた。


あなた
またそんな事を…

クラウス
クラウス
戻って来い、あなた
クラウス
クラウス
でないと僕は…

あなた
…間違ってたんだよ、クラウス
あなた
スパイが恋なんてしちゃいけなかった
あなた
ただ、それだけ

今までの会話の中で、唯一、感情が見えた言葉だった。


あなたの本心なのだろう。



クラウス
クラウス
何故そんな事を、

あなた
私のことは忘れて


クラウス
クラウス
……嫌だ

あなた
言うと思った
あなた
でもお願い、あなた達の為なの
あなた
…でも、クラウスと私が組めば、
なんとかなったのかもしれないけどね

クラウス
クラウス
?…どういうことだ、あなた、

あなた
――っ




言葉の意味を問い詰めようとした瞬間、


僕の口はあなたの口で塞がれた。




実際に唇を重ねたのは、ほんの数秒のはずだが、


とても長い時間が経っているように錯覚した。




とても深い口づけだった。






あなた
…私はこれから隠れて生きていく
あなた
大丈夫、あんたと殺し合うなんて事には
ならないようにするから



そう言ってかなしそうに笑って見せるあなた。


あなた
愛してる、クラウス
あなた
さようなら



そう告げると同時に、胸の隠しポケットから銃を取り出し、

僕の左脚を狙って、躊躇いを見せることなく引き金を引くあなた。



すぐに距離を取り、直撃は免れたが、

その隙にあなたは消えてしまった。






知らなければならない。


あなたが戻ってこられない理由を。



彼女は「あなたの為」ではなく、「あなた達の為」と言った。


恐らく、「灯」の事だろう。

確実に何かある。




絶対に、強引にでも、あなたを僕の下へ連れ戻す。






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書き始めた頃からずっと考えてたセリフを

やっと使うことができてニコニコな私です。


次回から新章開幕、ですかね?

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