後から到着した車からあなたが出てきた。
…服装の趣味が、かなり変わっている…?
太腿が見える黒のタイトワンピースに、黒のヒール。
毛皮がたくさん使われた真っ白のロングコートを羽織っている。
あなたはいつもパンツスーツ姿で、
派手な格好は好まないんだと思っていた。
…まあ、そんなことはどうでもいい。
この男たちはあなたが所属するマフィア、
コンストリクターの一員なんだろう。
久しぶりの再会を喜ぶわけにはいかず、
僕は再び、身を隠す。
その後、あなたがガラス戸を蹴破り、
単身で店の中へ乗り込んだ。
その後、数分で店から出るあなた。
右手で店主を引きずり、左手には何かの資料が握られている。
店主と資料を男に押し付け、歩き出した。
渋々といった様子で男たちは車に乗り込み、
何処かへ帰っていった。
目立たない場所へ移動したあなたを、距離を保ちながら追う。
わざわざ着いてきたくらいなんだから、と、あなたは言う。
少し固まって、肩をすくめるあなた。
今までの会話の中で、唯一、感情が見えた言葉だった。
あなたの本心なのだろう。
言葉の意味を問い詰めようとした瞬間、
僕の口はあなたの口で塞がれた。
実際に唇を重ねたのは、ほんの数秒のはずだが、
とても長い時間が経っているように錯覚した。
とても深い口づけだった。
そう言って哀しそうに笑って見せるあなた。
そう告げると同時に、胸の隠しポケットから銃を取り出し、
僕の左脚を狙って、躊躇いを見せることなく引き金を引くあなた。
すぐに距離を取り、直撃は免れたが、
その隙にあなたは消えてしまった。
知らなければならない。
あなたが戻ってこられない理由を。
彼女は「あなたの為」ではなく、「あなた達の為」と言った。
恐らく、「灯」の事だろう。
確実に何かある。
絶対に、強引にでも、あなたを僕の下へ連れ戻す。
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書き始めた頃からずっと考えてたセリフを
やっと使うことができてニコニコな私です。
次回から新章開幕、ですかね?
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!