32年前___ルシア・アリアトリス15歳、郊外の村
目の前に並べられたのは数多の武器。これから行われる儀式…土地神にとっての見世物に使われる。
「ルシア、そろそろ時間よ」
「今行くよ」
詳細を知ったのは数年前、そこからずっと逃げる隙がないか考えた。
案内されたのは村から少し離れた森の中。夜という事もあってどこか不気味だった。
そこからは、僕が知っている流れ通りに儀式が進んでいった。司祭が祈りを捧げ、踊り子が舞う。そして最後に、『甘美の子』と呼ばれる存在…言ってしまえば、生贄と村の男たちが戦う。
「さあ、皆の者武器を取りなさい」
一対十。村の成人した者達が武器を僕に向ける
隙を作れるならここしかなかった。男たちを全員倒して森の中に逃げる。それが、唯一の道
僕は剣を手に取り構えた
「大人しくしな、痛いのは嫌だろう?」
一人の男がニタニタ笑った。気持ち悪い
男が剣を振り下ろす。遅かった。
半歩右にずれて攻撃を交わしすれ違いざまに男の懐に入り込み剣を返した。
次の瞬間、男は地面に倒れていた。
息を吐く間も無く投擲された槍を避け、そのまま落ちた槍に武器を変えた。
「あと九人…か」
小さく呟く。僕の声は金属のぶつかり合う音にかき消された。
周囲を見回せば正面に三人、左右に二人ずつ。そして少し離れたところから弓を構えている男が二人。あと一人は、どこにいる?
振り返るより先に左肩に痛みが走った。それでも動きを止めることはしない。逃げ出すには、最低でも正面は突破しなければいけない。
「このまま押し切るぞ!」
一人が叫ぶと一斉に襲いかかってくる。僕は槍を構え直した。ただ死にたくない。それだけだった。
槍を横薙に振る。一人が怯みその隙に横へ飛び退き走り出す。考えることは一つだけ。正面突破する
「逃げたぞ!逃すな!」
叫び声が聞こえても足を止めない。木々の間を縫うように走り、攻撃を避けた。
「待ちなさいルシア!」
母の声が聞こえたが振り返らない。恨んでいたわけじゃない。育ててくれた恩は感じていた。けど、それでも僕は生きたかった。
背後から飛んできた矢が木の幹に刺さる音がする。恐怖で足が止まりそうになるが止まってはいけない。
村の人達が叫んでいた。それでも僕は走り続けた。
どれだけ走ったかわからない。気づけば開けた場所に出ていて、遠くに知らない街が見えた
「逃げ…きれた…?」
朝日が昇り鳥のさえずりが聞こえていた。
僕は街の方に足を進めた。
「わっ…」
どうやら体は限界だったようで倒れ込んだ。それでも、不思議と心は軽かった。
「君!大丈夫か?!」
知らない声がしたが、僕の意識はそこで途切れた
戦闘シーン難しかったです。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。