翌日、出先用の格好で集合場所に向かった
スマホをいじっていると、時刻は集合時間を二十分ほど過ぎていた
少し心配になって、電話をかけてみようとLINEを開いた
すると、誰かから肩をトントンと叩かれた
多分こえくんだ
振り返ると、パッと見女の子のようなこえくんがいた
片方の横髪を編み込みのようにしてまとめて耳にかけていて
いつも着けている花のヘアピンで留めていて、髪の毛がふわっとしている
かわいい
一番にそう思った
それから電車に乗って、遠くの水族館に行った
こえくんは電車に乗るのも、電車に乗ってどこかに行くのも初めてだったようではしゃいでいる
弟みたいだなぁと思った
しばらくして降りる駅につき、人混みの中ではぐれないように注意して駅を出た
水族館方面のバス停までの道を歩きながら、疑問だったことを質問してみた
しつこいほど謝っている間にバス停につき、バスを待った
時間がピッタリだったから、あまり長い時間待たなかった
バスの席に座り、こえくんは窓から見える景色を楽しんでいた
電車と同じで、こうしてバスに乗って遠出をするのは今日が初めてだったそう
しばらくして、降りるバス停が機械のような女性の声で紹介されていた
バスを降りて、目的の水族館まで歩く
あまり会話を始められず、ほとんど会話がないまま人が多い道を歩いた
水族館でチケットを買って、色んな海の生き物を見た
熱帯魚や淡水魚、深海魚の展示、触れ合いコーナー、クラゲ
クラゲが見れる場所は少し暗くて、落ち着いた雰囲気の場所
ミズクラゲの水槽の目の前の椅子に座って、壁に寄りかかってプカプカ浮いてるミズクラゲを見つめる
こえくんはクラゲを生で見たのは初めてらしく、ずっとミズクラゲを見ている
こういう場でスマホをいじるのはダメだと思ったから、ミズクラゲを見つめているこえくんを見ていた
そんなにミズクラゲが好きなんだろうか
いや、初めて生きたものを見たから興味津々なだけか
クラゲのことをあまり知らないし、見たことがないっていうわけじゃなかったから
こえくんみたいに興味を持ってクラゲを見ることなんかない
まぁ、自分の前に見たことがない生き物がいたら興味津々にもなるか
生き物にさん付けするところも、語尾が上がる喋り方も、目の前に興味を持ってる横顔も
全部、好き
楽しそうにして笑っているこえくんが、好き
聞こえるわけがないと思って、本音を吐いた
すると、こえくんが固まって、ゆっくりれるのほうを振り向いてきた
徐々に顔が赤くなっていくこえくん
熱でもあるんだろうか
戸惑いながら手話でそう質問をすると、こえくんは首を横に振った
なんなんだろう
れるの顔に何か付いてる?
こえくんの反応からして、相当はっきり聞こえてしまったんだろう
恥ずかしさと、またあのときの感覚を味わう恐怖で頭がいっぱいになった
この空気から逃げ出したかったけど、こえくんがそれを阻止してきた
すごく言葉が詰まっているように見える
断る言葉を探しているんだろうか
断られたら、もう同性との恋愛関係を発展させるのはやめよう
これからは"当たり前"に、異性とそういうのをやっていって___
恥ずかしそうだけど、すごく真剣な顔で返事をしてくれた
イエスなんて貰えると思ってなかった
なんて、すごく失礼なことを聞いてみた
こえくんは思いっきり首を横に振った
今度は自分の顔が熱くなっていく
誤魔化せないけど、こえくんから目を反らしたくて正面のタコクラゲの水槽に目をやった
水族館は涼しい気持ちになるはずなのに、体は日に照らされたようにどんどん熱くなっていく
心臓の音がドンドンと体全体に響く
嬉しいんだろうか
すごく嬉しいけど、ちょっと違う
赤くなってる顔を見せたくなかったけど、こえくんはれるの顔を両手で掴んで無理やり目を合わせた
やばい、ほんとに無理
恥ずかしさで死にそう
頭の中で色んな気持ちがぐるぐると渦巻いている
すると、こえくんはパッと手を離して手話をした
そう聞くと、こえくんが体重を預けてきた













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。