少し遅めに家を出て、校舎に入る
あのときの顔が熱くなっていく感覚がまだ残っている
思い出すとまた心臓がドキドキしてきた
早くゆうくんたちと話して気を紛らわそうと思って、急ぎ目で教室に入った
今日もこえくんの机には落書きが書かれている
それに反応せずに自分の席につき、スクールバッグの中の教科書やノートを机の中に入れる
そのとき、こえくんがまだ来てないことに気が付いた
家の事情か体調不良だろうか
生活ノートで時間割を確認していると、明るい声の挨拶が聞こえてきた
途端に心臓がドキッと跳ねた
今日もクラス全員が無視する
そして、クラスの中心的なメンバーが絡む
あからさまな落書きに「綺麗」なんて感想が言えるのはこえくんぐらいだろう
横目でそんな会話を見ていると、こえくんと目が合った
前と同じように無視しようと思った
それがこのクラスでは正しい
そうすることでクラスから外されることはない
それだけを考え、顔を反らそうとした
そのとき、急にその言葉を思い出した
気が付いたられるはこえくんの目を見ていて
人と話すときぐらいの普通の声量で挨拶を返した
それが教室の隅から隅まで響き渡った
こえくんは転校して間もないときと同じように驚いた顔をして、ニッコリとした
その場にいたクラスの全員が一斉にれるのほうに目を向けた
誰なのかは分からないけど、小さく舌打ちをする音が聞こえた
翌日、れるの机や椅子には速効性接着剤が巻き散らかされていた












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。