佳紀の頬を嫌な汗が流れる 。
知ってしまった後ろめたさからかは分からないが 、弓弦翎は既に地形図に目を戻していた 。
そう言って 、司書さんが手に取った「日本地名大辞典」という本から 、首立村についての部分を読んでくれた 。
「 ノウヌキ様 」その言葉に松浦さんは反応したのだろうか
ひどく澄んだ 、虚ろな眼を浮かべて 、ぽつりぽつりと口を開いた
本を一旦片付けて 、司書室に案内された
思い出すように 、少しずつ 松浦さんが 「ノウヌキ様 」について話し始めた 。
その光の純粋で残酷な疑問を 、佳紀が失礼だと 、肩でどついた 。
と 、眉を寄せて食い入るように質問するヒカルに 、未だ穏やかな顔で松浦さんは言葉を返した
はじめちゃん … ? 、はじめって …
そう3人で悩んでいると 、閉館のアナウンスが流れていた
カア 、
カア 、カア…
ケッタを押している佳紀とヒカルの少し前を 、弓弦翎は小石を蹴りながら歩いていた 。
「 それでも 、大事な人やったなぁ って… 」
松浦さんが最後に言っていたその言葉が 、自分の脳味噌の中をぐるぐると巡る 。
当たり前だよね
どんな人だって 、親は大切だ
どこまでいっても 、親は親なのだから
人殺しだって 、能無しだって 、誰だって 、さ
後ろで 、佳紀とヒカルが何やら少し言い合っているような声がした 。
いつもなら耳に入ってくるはずなのに 、今は全然内容が分からなかった 。
… わたしも 、ヒカルと一緒なんかな
松浦さんのお母さんの死を 、
小石を蹴っていた足が止まり 、弓弦翎はくるっと 2人の居る後ろを振り向いた 。
その言葉を聞いて、目の縁にじわじわと涙を溜めるよしきとは逆に 、 ヒカルはどうしたらいいか分からないような 焦った表情を浮かべていた 。
そう 、重いんだ
当事者であれば 、尚更
そしてそれは当事者間とは別の 、関係ない第三者にとっても
少なからず 、重いもの だと 感じるものなんだ
夕方のそよ風が 首元の汗を乾かすように吹き付ける
心なしか 、びゅうびゅうと音が鳴っているぐらいには 風が強い気がした
そう俯いて何か考えた後 、ヒカルはぱっと顔をあげて 、まっすぐこちらを見つめている弓弦翎と 、泣きそうな眼をこらえながら 微笑む佳紀をみて 口を開いた
ヒカルのことを 、知れば知る程
理解すれば 、する程
ここに居ったらあかんってことも 、浮き彫りになるかもしれん
でも 、もう目をそらすんはやめたやろ
ちゃんとあの時向き合えば良かった 、なんて後悔はもう
したない















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。