芥川の声は冷徹で、だがどこか焦燥を帯びていた
証言台に立つ敦の前に立ちはだかるその姿は、裁判官よりも裁判官らしかった
敦は黙って芥川の視線を受け止めていた
問いは単純だったが――答えるには、あまりに重い
言いかけて、言葉が喉で詰まる
思い浮かぶのは、あの日
手を伸ばせば届いた距離にいた彼女が、恐れるように後ろを向いた場面だった
“僕の気持ちは重い?”
云えなかった
その一言すら、届かなかった
だから彼女は、黙って遠ざかったのだ
芥川が切り込む
だが敦はゆっくり首を振った
芥川の瞳が揺れた
その言葉には、かつての自分にはなかった“甘さ”と、同時に“強さ”があった
太宰が、ゆっくりと立ち上がった
芥川が眉をひそめる
しんと静まった法廷で、その会話は誰の心にも残響を残した
傍聴席の隅で、鏡花はじっとその様子を見つめていた
敦の言葉に、何度も息を飲みそうになりながら――心の奥が、じわりと熱を持っていた
彼の真剣な目を、正面から見つめられなかった
心の奥に残るのは、自分に押し寄せる“罪悪感”だった
――彼の気持ちを、怖がって逃げたのは、私の方
その時だった
乱歩が唐突に口を開いた
太宰が目を細める
乱歩はにんまりと笑って、指を一本立てた
その言葉に、傍聴席の一角で、ルーシーが顔を伏せる
そしてもう一人――鏡花自身が、まっすぐと証言台を見つめていた











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。