第149話

キッチンの妖精
2,732
2025/06/10 22:42 更新





テヒョン
テヒョン
頼みがあるんですけど。


俺がそう切り出すと、ジンさんは「ん?」と眉を上げてこちらを見る。


テヒョン
テヒョン
今日の昼、庭で食べようと思ってて。ピクニックっていうか、軽く外で。だから昼用のサンドイッチ、ボックスに詰めてもらえますか?
ジン
ジン
はぁあ!?ボックスに詰めろぉ?なんで俺がそこまでしなきゃいけないんだよ!


やっぱりきたか。
声も顔も、完全に不満全開モード。

ジン
ジン
しかもピクニックだとぉ!?貴族か!?ったく、これだから坊ちゃんは、
ジョングク
ジョングク
ジンさん、お願いっ!


ジョングクが、ぱちんと手を合わせて、上目づかいでジンさんを見上げる。

瞳がうるうると光ってて、この顔をされたら俺ならひとたまりもないが、ジンさんは…

ジン
ジン
………


見事に固まってるな。

ジョングク
ジョングク
んと、僕ね、ピクニックなんて、ちっちゃい頃にしかしたことなくてね、だから…お外でごはん食べるの、したいの。ジンさん、お願い…
ジン
ジン
………


沈黙。


そして──

ジン
ジン
まっっかせとけぇ!


まさかの快諾。


テヒョン
テヒョン
………
ジン
ジン
ジョングクの頼みとあらば任せなさい!張り切ってオシャレボックスにしてやるとも!バランスも彩りもばっちり、映えるやつにしてやるからな!
テヒョン
テヒョン
………


ついさっきまで文句言ってた人と、同一人物とは思えない豹変っぷり。

ジョングク
ジョングク
僕、お手伝いもするね!


ジョングクの申し出に、ジンさんは目を細めてニコニコしている。

ジン
ジン
やー!えらいなぁ!
感動して涙が出そうだよ〜。
テヒョン
テヒョン
ジンさん嬉しそうすぎでは?
ジン
ジン
だってジョングクとキッチン立てるとか、尊い以外の何物でもないだろ?動画撮っとく?タイトル“天使、爆誕”な?
テヒョン
テヒョン
そんなの出したら、どんな手段使ってでも全ネットワークから抹消しますけどね。


ぴしゃりと言い返したが、ジンさんの機嫌が絶好調なことは火を見るより明らかだった。

…まあ、結果オーライか。

テヒョン
テヒョン
あ、ジンさん。
ジン
ジン
ん?
テヒョン
テヒョン
ジョングクに、包丁は持たせないでください。絶対に。
ジン
ジン
うわぁ…過保護全開だな…
テヒョン
テヒョン
何か文句が?
ジン
ジン
いいえ〜。
ジン
ジン
んじゃジョングクには、
なに手伝ってもらおっかな。
ジョングク
ジョングク
僕、がんばる!


ジョングクが身を乗り出して、ぱぁっと顔を輝かせる。

ジン
ジン
お!やる気満々じゃん!何やりたい?サンドの具材の準備?それとも詰めるほう?
ジョングク
ジョングク
んとね、どっちもする!
けど、つめつめしたい!
ジン
ジン
詰め詰めか!オッケー!じゃあ見た目かわいいの目指そっか!
ジョングク
ジョングク
うん!
ジン
ジン
じゃ、食べ終わったら
厨房までおいで。
ジョングク
ジョングク
はいっ!


ジョングクが嬉しそうに返事して、ぱくりとパンの残りを口に運ぶ。

その頬がハムスターみたいに膨らんでいて、この上なく可愛い。  

ジン
ジン
テヒョンも来るんだろ?
テヒョン
テヒョン
当たり前なこと聞かないでもらえます?危険物だらけの厨房に、ジョングクひとりで行かせるわけないでしょ。
ジン
ジン
あ〜はいはい、すみませんね〜当たり前のこと聞いちゃって、過保護テヒョンさん!













朝食を食べ終えた俺たちは、時間を見計らって厨房に向かった。

ジョングク
ジョングク
ジンさーん!


ジョングクが弾む声で扉を開けると、中ではジンさんが、すでに材料を並べて待っていた。

ジン
ジン
おっ、来たな。待ってたぞ我が助手くんと、過保護くん!
 

ジンさんは笑ってジョングクに向き直る。

ジン
ジン
はい、これ貸したげる。
服が汚れないようにな。
ジョングク
ジョングク
ん、ありがと!


ジンさんが差し出したのは、小さめサイズの、なんとも可憐な花柄エプロン。

ジョングク
ジョングク
わ、お花いっぱい。こんなかわいいの、僕がつけていいの?
ジン
ジン
おう!いいぞ!むしろつけてください似合うに決まってるので。いや、これ以外考えられないくらい似合う予定。
ジョングク
ジョングク
そうかな…?


止めるべきだろうな、と思った。

でも似合うのは間違いないし、正直ちょっと、いやかなり見てみたい。

理性と好奇心がせめぎあう。

テヒョン
テヒョン
………


結局、俺の口は黙ったままだ。


ジョングクが少し照れながら、エプロンをつけ始める。紐に手間取ってるのを助けてやった。

ジョングク
ジョングク
どぅお?

ジンさんが満面の笑みで叫ぶ。
ジン
ジン
はい優勝〜〜!

恥ずかしそうに笑った子兎は、俺のほうに向き直って首を傾げた。

ジョングク
ジョングク
テヒョン、どうかな…?
テヒョン
テヒョン
………


くっ…か、かわいい……

その姿をジンさんに見られてることが腹立たしくなるくらいには、可愛い。

ジョングク
ジョングク
んぅ…へん…?
テヒョン
テヒョン
…や、似合ってるよ。
ジョングク
ジョングク
ほんと?
テヒョン
テヒョン
うん。
ジョングク
ジョングク
んへへ〜


うれしそうに手を広げて、くるりと一回転。
スカートみたいな裾が、ふわりと揺れる。

あぁ、もう…
またそんな可愛いことを…!

ジン
ジン
テヒョン、今の見た?見た!?これはもう動画撮らなきゃ損じゃない?
テヒョン
テヒョン
抹消するって言いましたよね?
ジン
ジン
いやいや、“内輪用”だって!
テヒョン
テヒョン
その“内輪”って誰ですか。公開範囲を明示してから発言してください。



そんなやり取りをしている間に、子兎はとことこ歩いて流しに向かい、おとなしく手を洗っていた。

手を泡だらけにして、丁寧に指先まで洗ってるのが、いかにもジョングクらしい。

キッチンの窓から差し込む陽で、泡立てた石けんがきらきら光って、指先で魔法でもかけてるみたいだ。

結んだ花柄のエプロンの紐が、手の動きに合わせてふわふわ揺れる。

それがまた、なんともいえず愛らしい。

つい見入ってたら、

ジン
ジン
あれ?ここって
妖精さん住んでたっけ…?



ぼそり、ジンさんの声が聞こえた。









🐥🐰が帰ってきますね…!
そして!🐻🐰がいよいよ揃いますね!

待ち侘びたこの日を、みなさまと迎えられることを幸せに思います!

あぁ…ドキドキし過ぎて吐きそうです…
ファーーーーーっ!!


『詰め』の後編は夜に更新しますね🫶




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