お母さんとまふゆのやり取りを見たくなくて逃げるように部屋へ戻って泣いた後。
夕飯のために部屋の外へ出ると丁度まふゆと会ってしまった。
今丁度会いたくなかった相手。
早く切り抜けたくて適当にその場から離れる。
お母さんもお父さんも私を無いものとして扱っている。
授業参観も何もかも来ない。
面談などは来ざるを得ない為来ているが、興味を示さないため「よろしくお願いします」
これだけ伝えて先生に丸投げ。
ご飯は余り物。
食卓で食べてはいけないので部屋で食べる。
明確に言われてはいないが、食卓で食べると睨まれた日から一人で食べている。
いつもの事。
いつもの事で、お母さんが私に興味なんて抱くはずないのに期待してしまっている自分がいる。
お母さんが私に興味を抱くということは自慢できる娘になるということ。
頑張って勉強して、私にしては高い点数をとってもまふゆは「完璧」と言われるほど高い点数をとっていて。
まふゆが居なければ。
生まれてなければ私はお母さんに褒めてもらって、たくさん愛してもらってたのかな。
朝。
私の一日はお母さんにもお父さんにも無視されながら朝食を食べることから始まる。
少しだけ期待を込めて挨拶をする。
………まふゆしか見えてないんだろうけど。
私はクラスの中で比較的目立つほうだと思う。
私が通う神高の2年生では一応10位辺りを争ってるほどは勉強ができる。
………でも、まふゆは神高じゃなく、宮益坂女学院で成績優秀。
まふゆに比べてしまえば、私なんて__。
席に着くと隣の席の天馬司くんが話しかけてくる。
天馬くんは隣の席になる前から絡んできたけど、隣の席になってから更に話しかけてくるようになった。
それと今みたいに心配するように発言する。
気づかれちゃダメだ 。
お母さんに興味を持って貰うんだから。
まふゆより「完璧」にならなきゃ。
私はお姉ちゃんなんだから。
妹より優秀じゃなくちゃいけない。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。