困ったなぁ…
てかアイドルKAITOってこんな人気あったんだ…
無知って罪なのかなぁ…
私はどうしたものかとその場で考え込んだ。
…間ぬって行くしかないのか…やだなぁ…
と思った途端。
マナーモードにして鞄に入れた私のスマホが震えた。
……誰だろう、こんな時に。
私は鞄からスマホを取り出し、電源をつけた。
すると、祐からメールが来ていた。
祐…。
言って貰えるのはありがたいけど…目立つのは嫌だし、これ以上祐を困らせる訳にはいかないし…
私は色々考え、祐に返信をした。
素っ気なかったかな、と少し反省した。
…でも気合い入ったかも。なんの気合いかは分からないけど…!
私は小声で「よし」と言って、身を縮こませながら教室へ入った。
私は黒板に貼ってある席表を見て、自分の席に座った。
机の右上に「袖口 あなた」と書いてある紙が置かれてあったから、この席で間違いなかった。
私は真ん中の列だったので、廊下からの黄色い声がうるさく感じた。
全く、どこまで人気なのよ。
教室に既に入室していたクラスメイトのほとんどはKAITOの席に向かっていて、律儀に席で待機しているのは少人数だった。
私は一応、KAITOの席を探した。
群がっていたのは廊下側の列だったから、そこにKAITOがいるのだろう。
…顔だけでも見たいなぁ…
でもたまにかっこいい声が聞こえてくる。
声聞けたからいいのかな…
と思った途端。
びっくりした…。
声と口調的に女の教師なのかな。
すると、KAITOを取り囲んでいた野次馬たちは獲物から離れる虫のように散らばっていった。
ふぅ…。なんだか一安心。
ちらっと腕時計を見るとHRの時間だった。
だから教師が注意したのね。
みんなが席についたタイミングでクラスに教師が入ってきた。
恐らく、さっきの声の主の先生だろうか。
夏目、と名乗った教師はベリーショートの髪に、すらっとしたスタイルで、若そうな人だった。
自己紹介の内容は要約するとこうだった。
英語教師で、留学経験を持っており、今年からこの校舎に来たそうで、バレーと英語部の顧問で、イケメンが好き、という普通な自己紹介だった。
イケメンが好き、と言った時、視線はKAITOに向かったが。
その時に私もちらっとKAITOを見た。
まさに絵に書いたような綺麗な顔立ちで、澄んだ青髪がとても綺麗だった。
そりゃみんな推すよね…
その後、1人づつ自己紹介をすることになった。
自己紹介、何言おうかな…
そう考えていると、廊下側の席のKAITOが立ち上がった。
教室の中は既にざわついている。
ここまで人気だとさすがにちょっと…と思った。
自己紹介で黄色い声あげたの初めて見た…。
というか…
このクラスで大丈夫なのかな…
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。