7:37ー
目覚めると目の前には見知らぬ人間。
ここがどこだか分からない。
立ち上がろうとした瞬間
激痛が走った。
今ある力の全てを、状況を理解するためにつぎ込んだ。
周りへの警戒も同時進行に、ひとつずつ整理していく。
憎むべき「人間」が目の前にいる。
そう理解した瞬間に言葉を発した人間。
ー許さねぇ。
念じるように繰り返す。
いつまた攻撃されるか分からない。
警戒を怠らずにまた頭を整理する。
ゆっくりと話す人間の声は柔らかく、落ち着く声をしている。
警戒する必要がないと心の奥で本能が告げ始めた。
頭の中で繰り返される怒りと本能が戦い始める。
カチ コチ
よく聞こえ始める時計の音。
反抗しようと声を出したが届かない。
力が入らない。
目だけで訴える。
困ったように微笑みながら人間は続ける。
さっきよりも柔らかく、ゆっくりと微笑む人間。
優しく、包み込むような笑顔に、警戒が少しずつ溶けていく。
頭と心が戦い、一瞬止む。
同じ速度で瞬きを返していた。
無意識だった。
8:08ー
カチッ
意識を戻した瞬間と時計の音が重なる。
人間はそう言うと、忙しなくパタパタと音を立てて動き始めた。
シャー…
少し離れた場所で大量の水の細かな音。
ブォー…
今度は何か大きな機械音。
パチンッパチンッと時々音が鳴りながら、しばらく静かになっていた空間。
ジャーっとさっきよりも近い位置で激しく聞こえる音。
何かを手にもって近づいてくる人間。
復唱する心。
人間は微笑み、ゆっくりと瞬きをした。
心に抗うことに疲れた。
ほんの少し警戒を解き、人間を観察し、様子を見ることにした。
瞬きを返すと、人間は立ち上がり、ゆっくりとドアに進む。
部屋から出て、全部閉め切る前に顔を出した。
ー行ってきます。
バタンッ
音が響く。
静かになった。
狂うことなく刻まれる時計の音が心地よく、痛む体を癒す。
肌寒い部屋。
暖かい布に身を任せる。
瞼が重くなっていく。
8:48ー













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。