第6話

side S-始まり-
329
2022/10/05 12:00 更新
7:37ー




目覚めると目の前には見知らぬ人間。





ここがどこだか分からない。



シュガ
シュガ
(…っつ!!)
立ち上がろうとした瞬間

激痛が走った。

シュガ
シュガ
今ある力の全てを、状況を理解するためにつぎ込んだ。
シュガ
シュガ
(昨日俺は何を…)
シュガ
シュガ
(確か…いつも通り散歩して…)
シュガ
シュガ
(いつもの場所で月を眺めてたんだよな…それから…)
周りへの警戒も同時進行に、ひとつずつ整理していく。
シュガ
シュガ
(…っ!!人間…!!!そうだ!!俺をやったのは…っにn)
あなた
…あの…びっくりしちゃったよね…?
シュガ
シュガ
…!!!
憎むべき「人間」が目の前にいる。


そう理解した瞬間に言葉を発した人間。



ー許さねぇ。


念じるように繰り返す。
あなた
昨日…怪我してたんだよ、シュガ。
シュガ
シュガ
(シュガ…?)
シュガ
シュガ
(何を言ってるんだ?こいつは…)
いつまた攻撃されるか分からない。

警戒を怠らずにまた頭を整理する。
シュガ
シュガ
(こいつも人間だろ…?奴らと同じだろ?)
あなた
あ…えっと…シュガなんて勝手に呼んでごめんね?
ゆっくりと話す人間の声は柔らかく、落ち着く声をしている。

警戒する必要がないと心の奥で本能が告げ始めた。

頭の中で繰り返される怒りと本能が戦い始める。
あなた
あのね、怪我が治るまで、もう少し時間が必要なんだって。
あなた
えっと…治るまで、一緒に暮らそう?
カチ コチ


よく聞こえ始める時計の音。

シュガ
シュガ
(一緒に暮らす…?なんだと…?ありえない。)
シュガ
シュガ
……ィャ…
反抗しようと声を出したが届かない。

力が入らない。

目だけで訴える。
あなた
…ってー…私がこんなに緊張してたら、シュガだって緊張するよね。ッハハ…
困ったように微笑みながら人間は続ける。
あなた
少しずつでいいから、お互い緊張ほぐしていこうね。
元気になったら、元のお家帰ろうね。
さっきよりも柔らかく、ゆっくりと微笑む人間。
シュガ
シュガ
……
優しく、包み込むような笑顔に、警戒が少しずつ溶けていく。
シュガ
シュガ
(こいつはもしかしたら違うのかもしれない。)
シュガ
シュガ
(…!!いや違う!!こいつだって…こいつだってあいつらと…)
頭と心が戦い、一瞬止む。
シュガ
シュガ
……ッス…

同じ速度で瞬きを返していた。


無意識だった。
シュガ
シュガ
(俺今…)

8:08ー



カチッ



意識を戻した瞬間と時計の音が重なる。
あなた
……!!
うわやばっ仕事の支度しないとっ
人間はそう言うと、忙しなくパタパタと音を立てて動き始めた。




シャー…

少し離れた場所で大量の水の細かな音。

ブォー…

今度は何か大きな機械音。


あなた
よしっ、終わった!
あとは…
パチンッパチンッと時々音が鳴りながら、しばらく静かになっていた空間。


ジャーっとさっきよりも近い位置で激しく聞こえる音。



何かを手にもって近づいてくる人間。
あなた
お腹すいてるかな…。
ごめんね、私は仕事に行っちゃうけど、
必ず帰るから。
シュガ
シュガ
(…必ず帰る…)
復唱する心。
あなた
帰ったら、
一緒においしいご飯食べようね。
人間は微笑み、ゆっくりと瞬きをした。
シュガ
シュガ
(…いっしょ…に…)
心に抗うことに疲れた。

ほんの少し警戒を解き、人間を観察し、様子を見ることにした。
シュガ
シュガ
…ッス…
あなた
よしっ。
瞬きを返すと、人間は立ち上がり、ゆっくりとドアに進む。


部屋から出て、全部閉め切る前に顔を出した。

あなた
じゃぁ、待っててね。
ー行ってきます。




バタンッ


音が響く。



静かになった。

狂うことなく刻まれる時計の音が心地よく、痛む体を癒す。


シュガ
シュガ
行ってきます…か…
肌寒い部屋。

暖かい布に身を任せる。



瞼が重くなっていく。




8:48ー

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