龍友に連れられて来たのは
私達のたくさんの思い出が詰まった母校。
校内にこっそり入ると
悪ガキのようにニヤニヤする横顔。
それに釣られて私も笑っちゃう。
唯一変わったのはトイレが綺麗になったことかな。
そして、私の教室。
机が昔のように並べられててここで授業してたなぁ
なんて、思い出してついニヤつく。
1番廊下側の前から2番目。
今は違うの子名前が貼られてたけど
龍友はその椅子に座った。
龍友の隣に腰掛けた。
シンと静まる教室と窓から吹き上げる風。
カーテンがひらひらしてる。
龍友の目が丸い。
え?
驚いてる?
ニヤニヤすんなよぉぉ!
ずっと続けばいいのに。
同級生
そんな枠、嫌だ。
まだ、諦め切れてない?
泉さんの所行った?
好き…って?
…?
理解できない?
私、が?
" 当たり前やと思ってたものが無くなったら困る "
なの!
って…まさか
私はつい、涙を流す。
やっと…やっと実った…
下を向いてたら龍友が覗いて私の頭に手を乗せた。
私は頷くことしか出来なくて
龍友の小さな笑い声が聞こえる。
そう言われ、前を向くと
真剣な龍友の顔。
あ、信じていいんだ…
私の心臓は今までで一番跳ねて止まらない。
龍友の笑顔をずっと見てられる。
私だけが、龍友の側で
立ち上がって龍友の首に手を回す。
そしたら龍友の腕の力は強まる。
横にブルブル振って、子供だなぁって。
右手で指ハートを作って私に突き出してくる。
その姿が愛くるしくて
私の頬に手を添えて
ゆっくりと近づく私達。
そして、重なる。
もう、私だけの為じゃないよ?
自分のために生きるんじゃなくて
誰かのため、龍友のために私は強く生きるよ。
ずっと大好きな人と居れますように。
fin
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。