「なぁ燐」
「何ですか? 近藤さん」
部屋の隅で皆を見ていたはずの近藤がいつの間にか燐の隣に来ていた。
「俺達の最後を知ってるんだよな?」
〈確かに知ってる……
全員は知らないけど、大体は覚えてる〉
「そぉですね……
と言っても全員は覚えてませんよ?」
〈一番言いたくないのは山南さんと近藤さんと平助とそして沖田さんだ〉
「教えてくれって言ったら教えてくれるか?」
「はい……」
〈此処で嫌とは言えない〉
「皆、自分の最期知りたい?」
「うん」
「じゃ誰から話そっか?」
「俺!!」
手を挙げたのは新八だ。
「永倉さ「新八!」」
「分かった、新八からね」
〈新撰組の誰よりも長生きしたもんね〉
「新八はね、この中で一番長生きするんだよ」
燐は話し始めた。
「へぇ〜、幾つくらいまで?」
「七十六歳」
燐の言葉に周りは新八を見た。
「七十代まで生きるのは二人」
「もぉ一人は誰?」
まぁそぉなるな。
「一君だよ」
燐は斎藤の手をギュッと握った。
「斎藤君なら長生き出来そうだよね」
山南が言った。
「そぉだ一君って言えば結婚して子供が三人出来るんだよ♪」
何でもないことの様にさらっと爆弾を落とした燐。
その場に居た全員がピシリと固まった。
「斎藤が結婚!?」
〈そんなに驚かなくても〉
「因みに、子供は皆、男の子だよ」
土方の言葉をサラッと流して説明を続ける。
「そぉか……」
斎藤も想像がつかないのだろう。
「一君の子供だからきっといい子に育つよ」
「それまで此処に居られるかなぁ」
燐の呟きを斎藤が拾った。
「そぉだといいな」
「うん」
今まで明るかった燐が暗くなって来た。
「どぉした?」
「長生きして普通に死ぬのは
新八と一君だけだから皆の運命を
変えられたらいいなって思って……」
〈それでも、沖田さんの運命だけはきっと変えられない……〉
「そぉなのか」
「うん……」
「ぁ!! そぉだ!!
左之さんも結婚するんだよ」
先程の暗い雰囲気を吹き飛ばす様に態と明るく振る舞う燐が居た。
「ちょっと燐、何で左之だけ最初っから名前呼びなの?」
平助が少し不満げに言った
「ぁ〜 何となくかな……
その方が呼び易かったから」
燐は悪戯っ子の様に笑った。
「左之の嫁さんってどんな人?」
「商家の娘さんで、八三歳まで生きるんだよ」
斎藤の時と同じ様に原田の目を真っすぐ見て言った。
「子供は出来るのか?」
〈言っていいのだろうか?〉
「うん、一人だけ」
〈言わないでおこう〉
「男の子?女の子?」
「男の子だよ」
「なぁ、燐この中で酷い死に方をするのはは誰だ?」
いつの間にか、土方も燐と呼ぶ様になっている。
「土方さんのいう酷い死に方とはどれを指してるのか分かりませんが
まず、沖田さんは斬られて死ぬわけではありません、
そして山南さんは切腹、近藤さんは斬首
というのが三人の運命であり、私が未来で習ったことです」
〈さて、酷い死に方とは一体どれだろうか……〉
「質問いいか?」
誰も話そうとしない中で口を開いたのは近藤だった
「はい」
「まず、総司が斬られて死ぬわけじゃないってどういうことだ?」
〈自分のことより沖田さんのことか…… 過保護だなぁ〉
「沖田さんは労咳にかかってしまうんです」
〈この時代では決して治らない病〉
〈結核菌が見つかるのはこの時から十九年も後〉
「労咳かぁ……
確かに直す手立ては見つかってへんな 」
〈烝君〉
「今、発病してへんってことは潜伏期間なんやろ?」
〈流石、烝君だなぁ〉
「山崎さん、何で知ってるんだ?」
藤堂の質問に山崎は燐にバトンタッチした。
「それは、燐が知っとるよ」
〈もぉ~〉
「 烝君、自分で説明すればいいのに」
「めんどくさいからいやや」
燐は一度ため息を吐いてから説明をしはじめた。
「もぉ、しょうがないなぁ
烝君の生家は医者の家系で松本先生も 烝君の腕を認めてるんだよ」
その説明に皆が納得した様子だ。
「だから色々、詳しいのか」
「そぉいうことや」
説明したのは燐なのだが何故か山崎が偉そうである。
「流石に松本先生一人では隊士全員を診るのは大変だし、
近藤さんも土方さんもそれをわかってて烝君を入隊させたんですよね?」
二人の方を向いて質問した。
「やっぱり、燐は知ってたか」
珍しく、土方がおどけたような仕草をした。
「なんせ、未来から来ましたから」
燐は勝ち誇ったような顔で言った。
屯所に来て、さほど時間は経っていないのに皆は燐を信用していた。
「僕は幾つまで生きるんですか?」
「二七歳だよ」
今回は沖田の目を見れなかったようだ……
「労咳か……
未来では治るんか?」
山崎が聞いて来た。
「うん」
今では治る病。
「それは、無念だろな」
土方まで俯いた。
「じゃぁ、山南さんの切腹と近藤さんの斬首は何で……」
「山南さんは伊東さんが入隊したことと身体が弱っていたことで
色々と限界が来てしまってのか元治二年の二月に
突然、江戸へ行くと手紙を残して 此処を出てしまいます。
そして近藤さんは、坂本龍馬暗殺容疑を
新撰組にかけられたことで
責任者として斬首されてしまうんですよ」
長々とノンブレスで言った燐の声は段々と小さくなっていった。
この言葉に反応したのは勿論平助だ。
伊東は平助の師である。
「伊東先生が此処に来ることと
山南さんが出ていくことが何の関係があるの?」
必死の形相の平助。
「来年の六月五日、皆は池田屋っていう所へ
密会してる浪士達を捕まえに行くんだけど、
平助はその時に怪我をして一旦江戸に帰り、
伊東さんを連れて戻って来るんだけど、伊東さんは
平隊士としてじゃなく初めから参謀として
此処に来たことで再編成され、山南さんは今の
副長という立場から総長にされる。
そぉなれば、どうなるか大体想像はつくでしょう?
しかも、介錯をするのは沖田さんなんだよ……」
誰も口を開こうとしない。
聞いた土方ですらまさか、こんなに酷いとは思わなかっただろう。
「ねぇ燐、俺がその池田屋で
怪我しないで江戸にも帰んなければ
山南さんの運命を変えられるのかな?」
静かな部屋に平助の決して大きくない声が響いた。
「そぉかもしれないね……
分からないけど、私がこの時代に来たことで何かが変わると思いたい」
〈沖田さんの労咳だけはどうにも出来ないけど、
出来れば食い止めたい山南さんの脱走も近藤さんの斬首も……〉
「最後に芹沢さんってどぉなるの?」
燐はその質問に一瞬戸惑ってから正直に答えた。
「土方さん達自らの手で暗殺するんですよ……」
〈これも運命〉
「こんな暗い話しは止めよう」
暗〜くなった雰囲気を無理矢理明るくするべく、
燐が一際大きな声で言った。
「そぉだな」
芹沢粛清のメンバーには山南も入っている。
〈とにかく、目の前のことから一つ一つ解決していけば
きっと、皆の運命を変えられるきっかけが見つかるかも知れない。〉
〈彼は好きじゃなかったけどきっと、新撰組を思ってたに違いない〉
それから三日後芹沢は土方達によって暗殺された。
歴史と違うのは愛人だった梅が生きていること。
逃走した平間は見つからないままで……











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。