第4話

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2018/02/03 05:30
「起きたか?」

声をかけられた。

いつの間にか、そばに男がいた。

鉄格子の向こう側にいる男は、それはガタイがよく、腰に立派な刀がさしてある。

「わたしは、……」

そう言いかけた。

けれど、男はそれを制するように手のひらをこっちに向けた。

「なにも言わなくていい。お前の情報など対したことないだろう。使用人の分際で、分家の内密な情報など知るわけないのだ」

「っ」

そのとおりーー

愚問だった。

わたしは、雇われた使用人。なにも知らない。ただ与えられたことをやる。

掃除。炊事。洗濯。草むしり。

ほんとうにそんなことだけ。

なにも知らない。

そもそも、使用人は王族に近づいてはならない。

わたしは、王族のいないときに、お屋敷内を掃除する。

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