キーンコーンカーンコーン……
深いため息をついた僕は、気分が落ち込んでいた。
そう、僕の大好きななろくんが最近学校に来ないのだ。
なろくんは、4日前から来ていない。
とても心配だ。大丈夫だろうか……
僕はそう思い、放課後になろくんの家にお見舞いに行くことにした。
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帰り道。
僕はとても心配だった。
心配で、心臓が破裂しそうなくらい。
張り裂けそうな思いを押さえ込み、走って自宅へ帰った僕は、大急ぎでなろくんの家に向かった。
ピーンポーン
玄関のチャイムを鳴らす。
しかし、なろくんは出てこなかった。
どうしたんだろう。
ピーンポーン
何回もチャイムを鳴らしてもなろくんが出ない事に僕は不信感を抱き、玄関の扉に手をかける。
ガチャ
開いた……!?
鍵が閉まっていなかった。
僕はひとまず家の中に入り、リビングへ向かう。
リビングには、仰向けに倒れるなろくんがいた。
僕はなろくんを見つけるやいなや、なろくんを抱き起こし、肩を揺さぶった。何度も揺さぶり続ける内に、なろくんの目がゆっくりと開いた。
意識がある。
そう思った瞬間、凄く安心した気がした。
しかし、どこか変だ。
何か……違和感がある。
僕の予感は間違ってはいなかった。
しかし。
記憶喪失。
まさかこんなことがあろうとは。嘘であってほしい。夢であって欲しいと思った。
僕はなろくんの記憶を確かめつつ、自分の話せることを記憶喪失になってしまったなろくんに話すことにした。
なろくんはたどたどしく答える。
なろくんが僕に敬語を使う。
それは、凄く違和感があることだった。
そしてどこか寂しくなってしまう僕がいるのだ。
僕は名を名乗る。
やはり思い出せそうにないようだ。
なろくんは、とても不思議そうな顔でこう言った。
ぐうううう。
なろくんのお腹が鳴った。
なろくんは少し恥ずかしそうに目をそらす。
そうして僕はキッチンへ移動した。
なろくんには、待ってるように頼んでおき、僕は料理を作りながら同すれば記憶喪失が戻るか考えていた。
しかし、一向に思いつきそうにないので、僕はなろくんと一緒に料理を食べながら話すことにした。
僕は問いかけた。
なろくんは小さく頷いた。
僕は料理について話してみる。
なろくんは静かに食べている。
僕の料理を、とても、とても美味しそうに。
なつかしい味、と聞いて僕は少し嬉しかった。
僕は言う。
なろくんは、ハッとした様な顔だった。
だから。
僕がそういった時、なろくんは意識がふぅっと飛んだような素振りを見せ……
良かった。記憶が戻った。
そう思うだけで涙が溢れてくる。
とても嬉しかった。
思わず僕はなろくんに抱きついてしまっていた。
なろくんは突然の事に凄く困惑している。
……戸惑っているなろくんも可愛い。
僕はこの数日間なろくんが休んでいた理由を聞くことにした。
なろくんが無事だと分かって、僕はとても安心した。
ギュッ
いやいや。
相変わらず僕はなろくんを溺愛しまくっている。
こんなにも平和な日々が、いつまでも続けばいいなぁ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。