ノーマンは、誰にでも優しい。
誰とでも話すし、どんな質問にも笑って応える。
教師にだって好かれて、委員会でもリーダー格。
成績だって、俺と並ぶ、いや、それ以上。
そう____完璧だ。
それが、どうしようもなく腹が立った。
彼奴はいつも自分の「弱さ」を
見せようとしない。
まるで、最初から自分には
そんなもの存在しないと思わせるくらいに。
けど、俺は知ってる。
ノーマンがどれだけ人に嫌われるのを恐れてるか。
誰かに期待されるほど、
自分を捨ててまで応えようとするやつだってことを。
それがどれだけ歪んでいるか。
どれだけ脆いことか。
昼休み。
クラス委員の女子が声をかけてきた。
いや、巻き込まれただけか。
いつものパターンだ。
語尾をかぶせるように言って、
俺は机から立ち上がった。
彼奴はきっとどこまでも“理想の自分”を
演じ続けるつもりだ。
教室を出ると、
丁度ノーマンが廊下の窓際に立っていた。
こっちを見ていた。目が合った。
___何か言いだけな表情。
けど、俺は目を逸らし、そのまま歩き去った。
彼奴の笑顔の裏にあるものを、
俺はもう信じられない。
図書室の隅でノートを開く。
騒がしい昼休みから逃げてきたようなものだ。
ノーマンは、
多分本気で「みんなのため」に動いているんだろう。
でも、それが全部「自分のため」だってことにも、
気づいていない。
彼奴は「好かれるノーマン」でいないと、
きっと自分を保てない。
昔からそうだ。
誰にも嫌われないために、
優しく、賢く、なんでもできる自分を演じる。
でも、誰一人にだけでも
「弱さを見せれる」存在がいれば_____
って、そんなことを思っている時点で、
俺はまだ期待している。
顔を上げると、やっぱりノーマンだった。
本を抱えて、少し困ったような笑顔。
軽く答えて、視線を戻す。
それ以上関わる気はなかった。
_____はずだった。
俺が逃げた理由も、きっと此奴はわかってて、
それでも話しかけてくる。
俺は思ってないことを口にした。
ノーマンの声が少し低くなった。
いつもの笑顔が少しだけ崩れている。
言葉が強くなった。
ノーマンが黙り込む。
図書室の中、
ページをめくる音だけが聞こえた。
ノートの文字が少し滲んだ。
情けないと思った。
今更こんなことで揺れるなんて____
ノーマンの声は、やけに真っ直ぐだった。
一瞬、時間が止まった気がした。
言葉が詰まる。
ずっと、聞きたかった言葉だった。
でも、それが遅すぎたせいで、
俺の中には拭えない距離ができている。
彼奴の手が、テーブルの上に出た。
差し伸べた訳じゃない。
ただ、そこに置かれていただけ。
でもその“無言のお願い”みたいな仕草が、
心に引っかかった。
俺は何も言わずに、そっとページを閉じた。
<次回へ続く>












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。