第2話

仮面の中の本音
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2025/09/01 22:10 更新
ノーマンは、誰にでも優しい。
誰とでも話すし、どんな質問にも笑って応える。
教師にだって好かれて、委員会でもリーダー格。
成績だって、俺と並ぶ、いや、それ以上。
そう____完璧だ。
それが、どうしようもなく腹が立った。
彼奴はいつも自分の「弱さ」を
見せようとしない。
まるで、最初から自分には
そんなもの存在しないと思わせるくらいに。
けど、俺は知ってる。
ノーマンがどれだけ人に嫌われるのを恐れてるか。
誰かに期待されるほど、
自分を捨ててまで応えようとするやつだってことを。
それがどれだけ歪んでいるか。
どれだけ脆いことか。
クラスメイト
レイ、今度のクラス討論、司会やらない?
ノーマンもやるって
昼休み。
クラス委員の女子が声をかけてきた。
いや、巻き込まれただけか。
いつものパターンだ。
レイ
ノーマンがやるなら
俺はやらなくてもいいだろ
クラスメイト
そんなことないよ!!
ノーマンくんも
『レイが一緒なら心強い』って__
レイ
却下
語尾をかぶせるように言って、
俺は机から立ち上がった。
レイ
(またかよ...彼奴)
彼奴はきっとどこまでも“理想の自分”を
演じ続けるつもりだ。
教室を出ると、
丁度ノーマンが廊下の窓際に立っていた。
こっちを見ていた。目が合った。
___何か言いだけな表情。
けど、俺は目を逸らし、そのまま歩き去った。
彼奴の笑顔の裏にあるものを、
俺はもう信じられない。
図書室の隅でノートを開く。
騒がしい昼休みから逃げてきたようなものだ。
ノーマンは、
多分本気で「みんなのため」に動いているんだろう。
でも、それが全部「自分のため」だってことにも、
気づいていない。
彼奴は「好かれるノーマン」でいないと、
きっと自分を保てない。
昔からそうだ。
誰にも嫌われないために、
優しく、賢く、なんでもできる自分を演じる。
でも、誰一人にだけでも
「弱さを見せれる」存在がいれば_____
って、そんなことを思っている時点で、
俺はまだ期待している。
ノーマン
ここ、座っていい?
顔を上げると、やっぱりノーマンだった。
本を抱えて、少し困ったような笑顔。
レイ
好きにすればいいだろ
軽く答えて、視線を戻す。
それ以上関わる気はなかった。
_____はずだった。
ノーマン
レイ、さっきの討論のことだけど...
レイ
(あーぁ、来たか)
俺が逃げた理由も、きっと此奴はわかってて、
それでも話しかけてくる。
レイ
お前の引き立て役になるつもりはない
だからやるつもりはないから
俺は思ってないことを口にした。
ノーマン
......そんなつもりはなかったんだけどなぁ...
ノーマンの声が少し低くなった。
いつもの笑顔が少しだけ崩れている。
ノーマン
ただ一緒にやれたらって、
思っただけだったんだけどなぁ...
レイ
それが“普通の感情”だったら、
俺もそう思えたのかもな
言葉が強くなった。
レイ
お前は“求められてる自分”しか出せない
本音だって全部、
仮面の奥にしまいこんでるんだろ
ノーマンが黙り込む。
図書室の中、
ページをめくる音だけが聞こえた。
レイ
俺達、あんときずっと待ってたんだからな
なんでいなくなるのか、どこに行くのか
何も言わないで、勝手に消えたくせに......
ノートの文字が少し滲んだ。
情けないと思った。
今更こんなことで揺れるなんて____
ノーマン
ごめん...
ノーマンの声は、やけに真っ直ぐだった。
ノーマン
僕、怖かったんだ
言ったら、君に嫌われるんじゃないかって
......誰よりも、レイにだけは
一瞬、時間が止まった気がした。
レイ
なんだよ、それ......今更......
言葉が詰まる。
ずっと、聞きたかった言葉だった。
でも、それが遅すぎたせいで、
俺の中には拭えない距離ができている。
ノーマン
もし、少しでも......また話せるなら...
僕、やり直したいな
彼奴の手が、テーブルの上に出た。
差し伸べた訳じゃない。
ただ、そこに置かれていただけ。
でもその“無言のお願い”みたいな仕草が、
心に引っかかった。
俺は何も言わずに、そっとページを閉じた。
<次回へ続く>

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