文化祭当日。
教室の入り口には、
手作りの看板と例のダサいロゴが掲げられていた。
「グレイスフィールド劇団」
_____誰がどう見てもセンスが迷子だが、
妙にしっくり来る。
朝からバタバタだった。
でも、不思議と嫌じゃなかった。
彼奴と一緒に作ったものが、誰かに役立ってる。
そんなら当たり前のことが、ちょっとだけ嬉しかった。
舞台裏で控えていたとき、ノーマンが俺を読んだ。
手には、補強した小道具の剣。
リボンまでつけてある。
俺はため息をつきながら、器用にリボンを外し、
綺麗に結び直してやる。
ノーマンは笑った。
少し前なら、その笑顔さえ嘘に見えたのに、
今は少しだけ違って見えた。
劇は、予想以上に上手くいった。
観客の反応も良く、教室は賑わい、
写真を撮る人の列までできていた。
そう言って笑ったノーマンの横顔を、
俺は少しだけ長く見てしまった。
多分、この空気が崩れるのが怖くて、
何も言えずにいた。
その時、突然教室の電気が落ちた。
音響機材の一部がショートして、
ブレーカーが落ちたらしい。
俺は手早く配線をチェックし、
ブレーカーを戻す。
ぱちんという音と共に、再び光が戻った。
ノーマンが感嘆したように言った。
小さく笑いながら、
俺はしゃがんだ姿勢のまま、深呼吸した。
その時、思わずこぼれた。
ノーマンが黙る。
でもその沈黙は拒絶じゃなかった。
やっと言えた。
何年も言えなかったことを____
ノーマンが、静かにしゃがみこんで、
俺と同じ目線になった。
まっすぐな目。
もう仮面じゃなかった。
俺は目線を逸らして、そっぽを向いた。
準備室の蛍光灯の下、2人で並んで座る。
外の教室からは、笑い声と拍手の音。
あの頃とは違うけど、今の俺達は、多分____
俺達は、ただ小さく笑いあった。
それだけで、十分だった。
𝑒𝑛𝑑.












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。