第8話

第5幕ー幕は閉じないー
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2026/02/28 09:00 更新
駅のホーム。

♪ ほーたーるのーひーかーり……

四重に重なった鼻歌。

俺は、はっと目を開ける。

……白やない。

夜の街。

ネオン。

人混み。

俺は立っている。

自由や。

でも、違和感がある。

ポケットの中に、紙。

震える指で広げる。

『ようこそ。一代目へ』

「……は?」



記憶が、ゆっくり戻る。

白い部屋。

歴代の''Curtain call 演出家''。

一代目の目。

そして最後の言葉。

「ほな、次の幕や」

その瞬間に、落ちた。

時間の底へ。



頭の奥で、声がする。

あの冷たい、抑揚のない声。

『終わらせとる思うな。繋げ』

景色が一瞬、白くフラッシュする。

目の前の通行人が、止まる。

音が消える。

俺の足元に、椅子が現れる。

一瞬だけ。

また消える。

世界は舞台。

白い部屋は裏側。

俺は――

一代目。



理解した瞬間、笑いがこみ上げる。

「はは……そういうことかいな」

終わらせる側は、
終わらされる側になる。

終わらされる側は、
最初の側になる。

円や。

始まりも終わりもない。

アンコールは、ずっと続いとる。



遠くで、若い声が鼻歌を歌う。

♪ ほーたーるのーひーかーり……

振り向くと、
フードを被った青年。

昔の俺と同じ顔。

同じ目。

まだ“気づいてへん”顔。

俺は、そいつの隣に立つ。

自然に。

誰にも見えへん。

「なぁ」

青年がわずかにこちらを見る。

「自分の終わり、考えたことある?」

デジャヴ。

完全な一致。

俺は、あのときの一代目や。

いや――

ずっと、俺やったんか?



世界が少しずつ白く滲む。

遠くで、さらに古い声が重なる。

五重、六重、七重。

無数の俺。

無数の演出家。

全部、同じ。

全部、循環。



最後に残るのは、ただ一言。

「アンコールは、本編や」

暗転。

そしてまた――

♪ ほーたーるのーひーかーり……

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