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第13話

11話|応援要請の段
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2025/06/21 14:12 更新


見つからない。あの子が探し求めてる彼女を見つけられずに今日を数えて、もう数ヶ月も経っていた。
あの子から、もう諦めに近いような顔を見る度にやるせない気持ちが浮かび上がる。だから、私は____
土井半助「………あぁ、雷蔵か。実はそろそろ強行手段に出ようと思うんだ」
不破雷蔵「強行手段ですか、?」
土井半助「そうだ。二人できり丸のお姉さんと言う人を時間を見つけては探してはいるが、数ヶ月経った今でも目撃情報は勿論の事、噂だって聞かない」
不破雷蔵「……そうですね、」
園田村で、きり丸の行った行動の数々が『異常』だとその場に居た彼らが感じ取ったのはつい最近の事だ。既に不破と土井を除いた何人かは、きり丸の素性を探り始めていた。
それを利用する。もしかしたら、あの子は怒るのだろうか?と思わずにはいられなかった。それでも、この手を使わない訳にもいかない。あの子が壊れる前に必ず。
 
 
鉢屋三郎「…それで、私達にも応援要請という事か」
不破雷蔵「うん、……日に日にきり丸の様子がおかしくなって……元はと言えば、僕と土井先生が『きり丸のお姉さん』を見つけるとか言って全然見つけられずに難航しているからなんだと思うんだけど………」
雷蔵の話を聞いて、あのきり丸が?まさかと驚いてしまったと言えば嘘にはなるが、今のきり丸なら、そうだろうなと納得してしまったのも仕方のないことだった。
『…………兵助、それは本当なのか?』
『事実だよ。確かにきり丸は言ったんだ!』
異常というか、違和感に気付いたのは、園田村の件が片付いて忍術学園に帰るまでの道で兵助達からの話を聞いた時。

まだ一年生で習うはずのない砲弾の防ぎ方の答えを導き出したんだと興奮した様子で、話していたからその場に居なかった私でも印象として強く残っていた。
それだけじゃない。度々、きり丸の口から出る『お姉さん』は忍術学園では物凄く噂にはなっていた。
庄左ヱ門は勿論、下手したら私達よりも遥か上を行く頭脳と、何処で身に付けたのか分からないアルバイトで得た広い人脈と知識。加えて、隠し切れていない丁寧な所作をきり丸は持っている。
問いかけられる。その度に、きり丸は『お姉さん』のおかげだと口癖のように言っていたのを私は何度か耳にしていた。

この時代だ。ただの子ども相手にそこまでするのかと気になるのは当然のことだった。
不破雷蔵「それで……三郎、手伝ってくれるかい?」
だから、これは都合が良かった。困ったように眉を下げる雷蔵に迷わず二つ返事で了承すれば、すぐさま安堵の表情を雷蔵は私に見せた。
不破雷蔵「……良かった」
噛み締めるかのように、拳を握りしめて泣きそうな顔をしている雷蔵の気を逸らしたかった私は口を開く。
鉢屋三郎「この件は勘右衛門達には伝えたか?」
不破雷蔵「ううん、この後に伝えるつもりだよ」
そうと決まれば言わなくちゃ、と慌てた様子で勘右衛門を探しに行った雷蔵の後に続いて、私も走り出した。
「いや、なんで早く言わないの!?」
「まさか、きり丸がなぁ~」
「早速明日から、街で情報収集しないと…この間、タソガレドキの戦が落ち着いたとはいえ、いつ戦が始まるか分からないし」
上から勘右衛門、八左ヱ門、兵助の言葉だ。どうやら雷蔵が心配していたことは無く全員が満場一致で協力を了承した事で、再び、お姉さんの捜索が始まったのだ。
 
 
「あら、希利きりちゃん。今日はこっちのお店で代打なの?」
「そうなんですよ~!塚口家の奥様が今朝、産気づいたそうで旦那様に急遽頼まれたんです笑」
「若いのに希利ちゃんも大変ねぇ~、終わったら声掛けて頂戴。商品にならない野菜だから廃棄になる前に持ってって欲しくて……」
「若いだなんて……えっ、良いんですか!?お言葉に甘えて終わり次第、声掛けにいきますね。おば様の野菜は美味しいので嬉しいです」
「ま~~~!!嬉しいこと言うねぇ、希利ちゃん!!」
ある町の片隅で、私は、第二の人生を送っている。あの子と出会う前の普通の日常が戻ってきていた。
勢いのままに簡単に荷物をまとめて、家を飛び出し、あの子に別れの手紙を残してからの生活は少し変わってしまったと実感する。稀にあの子の姿を探してしまう。
朝起きて、ご飯を作り、頼まれた仕事をこなして、おば様の子どものお世話をしながら歌を歌い散歩する。日が暮れる前に家に帰っては、作り置きしていたご飯を食べてお風呂に入り、筝を弾いて眠る。
この先、何度、繰り返すのかも分からない。この物語が終わるのかも分からず、いつ叶うのかも知る訳はずがない夢を、終わりを、こうして今も待ち続けている。
『お姉さん!』
夏が過ぎ去ろうとして、もう暫くするとあの子と出会った冬が来る。気持ちの整理はもうとっくに付いている。
無理矢理付けた。と言うのが、本当は正しいのだけれども、当時、私に残された選択はそれしか無かったの。
けれど、私は何度やり直すことになってもあの子の未来と考えて、自分の立ち位置等も関係なく、今回とった行動と全く同じ行動をするだろう。
「……さ、明日も早いしもう寝ないとね」
これだけは、直らなかった癖。寝る前にあの子に聴かせて寝かせていたせいか、染み付いてしまった日課の筝。
重低音を響かせながら、優しく、穏やかに弦を弾いて音を鳴らす。前と少し変わって、変わらない毎日を哀しむかのような筝の音色は日が沈んだ闇夜に消えていった。
 
 

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