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第1話

序章 ー 逃亡の夜 ー
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2025/12/13 05:32 更新
夜の帳が王都を覆い始めた頃、
私は隣にいるこはねの手を強く握りしめ、裏門へと走っていた。
背後では、処刑場に向かう兵達の怒号が風に乗って押し寄せてくる。
こはねも私も、息を切らしながら一度も足を止めなかった。
こはね
「 杏ちゃん……ごめん、私のせいで…… 」
「 大丈夫。こはねのせいじゃないよ。
  最後まで信じるって決めたの私だからさ。 」
私はこはねを連れ、咄嗟の判断で城を飛び出した。
王国に背く行為だと分かっていても、
このままだとこはねは冤罪で処刑されてしまう。
それだけは絶対に許せない。
私達は国境の森へ入り込み、
月明かりに照らされた獣道を進む。
風の音にさえ怯えながら。
やがて、王国を遠く離れた小さな丘のふもとに辿り着いた頃、
こはねの足は限界に近づいていた。
こはね
「 …っ、杏、ちゃん……もう、歩けない、かも…… 」
「 っ、分かった。ちょっと休も。 」
私は周囲を警戒しながら、こはねをそっと木陰へ座らせた。
『私が守らなきゃ――』
胸の中でその言葉だけが繰り返される。
その時――
草を踏む、柔らかい音がした。
私は即座にこはねを庇うように前へ出た。
剣はない。戦えるのは素手だけ。でも悔いはなかった。
月光の下に姿を現したのは、
白い装いをした、中性的な黒髪の少年のように見えた。
「 …… だれ? 」
その少年は私の張り詰めた声に驚いたように瞬きをし、
ゆっくり両腕を上げながら言った。
??
「 落ち着いて、私は敵じゃない。
  迷子……というか、任務帰りに道を見失って。
  君達、怪我してない? 」
声は落ち着いていて、敵意は感じられなかった。
私は、まだ警戒したまま一歩足を踏み出す。
「 近づかないで。 」
少年は少し困った顔で、しかし距離を保ったまま名乗った。
一歌
「 ……私は、スター王国騎士団、星乃一歌(ほしのいちか)だよ。
  教えて、君達は、何から逃げているの? 」
こはねが震えた声で答える。
こはね
「 ……っ、ちょ、ちょっと、事情が、ありまし、て… 」
私はこはねの言葉を遮り、短く言い切った。
「 悪いけど、私達のことは知らないままでいて。 」
一歌と名乗る少年は私達をしばらく見つめていた。
警戒、同情、判断――幾つもの感情が混ざった眼差し。
やがて一歌は静かに口を開く。
一歌
「 ……分かった。無理には聞かないよ。
  でも、夜の森は危ない。
  少なくとも、休める場所くらいは案内させて。 」
その言葉に、私は一瞬だけ目を見開いた。
見ず知らずの他国の人間に、そんな風に手を差し伸べるなんて。
私は、深く息を吸いこみ、
こはねと視線を交わしたあと、
「 ……信用はしない。
  でも、案内してくれるなら、ついてくよ。 」
それが、私と一歌の最初のすれ違うような出会いだった。
まだ互いをほとんど知らない。
だけど、どこか似ている影を抱えたもの同士の、
運命の第一歩だった。
To Be Continued …… 

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