第2話

第一章 ー 避難所の灯 ー
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2025/12/12 07:00 更新
暗い森を抜けると、ぽつんと小さな山小屋が現れた。
明かりはついていないけど、屋根の形はしっかりしている。
雨風はしのげそうだ。
まだ城を抜け出したばかり。
背後で鳴り響いていた警鐘の音が、まだ耳の奥に残っている。
こはねは冤罪。
それだけは、はっきりしている。
……でも、あの国は聞いてくれなかった。
一歌
「 ここ。普段は誰を使ってないんだけど、
  騎士団が休憩に使う場所なんだ。安全だよ。 」
こはね
「 …ほ、本当に、誰も来ない……? 」
一歌
「 うん。少なくとも今夜はね。 」
一歌の言葉は落ち着いていて、
こはねの肩の震えが少しだけ弱まった。
私は念の為、扉の周囲を確認してから中に入った。
湿った木の匂いがするけど、
暖炉も簡易的な干し草の寝床もあった。
( ……たすかった。ここなら、少しは落ち着ける。 )
こはね
「 杏ちゃん…… 」
「 大丈夫。少し休もっか! 」
一歌がランタンに火を灯してくれた。
橙色の優しい灯りが、暗い部屋を少しだけ暖かく照らす。
一歌
「 …さっきのこと……無理に聞かないって言ったけど、」
「 …… 」
一歌
「 君達、走り方で分かる。
  “追いつかれたら終わり”って覚悟のある走り方だった。 」
( ……っ )
図星だ。
どうして、初対面でそんなことまで分かるの?
たけど不思議と、一歌の声には押しつけがない。
ただ事実を見て、判断し、喋っただけ。
こはね
「 わ、私達…国に、戻れなくて…… 」
「 こはね、無理に言わなくていいよ。 」
こはね
「 ……でも、杏ちゃんばっかり守ってて… 」
こはねは小さな声で、私の袖を摘んで泣きそうになる。
一歌は少しだけ目を見開いた。
一歌
「 ……そっか。
  じゃあ、一緒にいる間だけでも、私が守るよ。 」
「 ……どうしてそこまで、? 」
一歌はランタンの火を見つめたまま答えた。
一歌
「 誰かのために無茶する人を、放っておけないんだ。
  ただそれだけだよ。 」
( ……なんて、いい人なんだろう )
私はこはねをそっと抱き寄せた。
こうしていると、ほんの少しだけ息がしやすくなる。
一歌
「 ひとまず、今日は眠って?
  明日になったら、森の出口の様子を見てくる。 」
「 それは危険じゃ…… 」
一歌
「 私は騎士団所属だよ。
  こういう時こそ動かないと。 」
その言い方はとても誇らしげだった。
( ……強いな。
  同い年に見えるのに、芯がある。 )
でもその強さに、少しだけ安心した。
こはね
「 杏ちゃん……となり、いい…? 」
「 もちろん!おいで。 」
こはねの手を握りながら横になると、
ホッとしたようにこはねが息をついた。
( こはねが無事なら、それでいい。
  明日はどうなるか、分からなくても…… )
ただ、このひと時を守りたい。
避難所の小さな灯りが、
逃げ続けた私達の初めての休息を照らし続けていた。
To Be Continued……

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