理事長室を出て、舜が案内してくれるままあとをついていく。
ちらりと舜の横顔を見つめながら、ふと思った。
へぇ~、いるんだ。意外。
そう言うと舜は一瞬、苦しそうに顔を歪めて、口を開いた。
首を横に振りながら言うと、舜先輩は口角を上げていたずらっ子のように笑う。
…男って謎だ~
眉間にシワを寄せ、ぐっと顔を近づけていた舜。
顔近づけるのは色々危ないっ…!
舜は私のピアスを、不思議そうにジーッと見つめている。
これはただのピアスなんだけどな…
面白そうに笑う舜に、ほっと胸を撫で下ろす。
ピアスに救われた。話が切り替わってよかった…
ふと思い出して質問した私に、舜は話を始めた。
たまに……か。
普通暴走族同士は、会えば一触即発。ケンカが日常茶飯事。
だけど、前はfatalとnobleは総長同士が仲良しで、事実上協定が結ばれていた。
今はどうか知らないけど、そのおかげで仲が保たれているのかも。
1つの学園内に共存できているのも、頷ける。
昔は私はfatalの仲間だった。今はどっちにも所属してない。
だからfatalについては詳しい。nobleも蓮が総長やってるから詳しい。
だから蓮が春季とそう簡単に仲良くならないと思うけど……
不思議に思ったのもつかの間、私は次の舜の言葉に目を見開いた。
……え? fatalが野蛮?そんなはずは……
そうなんだ……
そんなに野蛮だと思われてるなんて、いったい何があったんだろう……?
ん…?つまり生徒会に入れば正当防衛として喧嘩できるってこと…?
…その恋人心当たりしかないんだけど
”サラとミア”
その呼び方に確信した。
舜が話しているのは――私のこと、だと。
ミアとは、私の通り名だ。
自分でつけたわけではなく、いつの間にかそう呼ばれていた。
ちなみに、fatalのみんなや、暴走族の友達はみんな私のことをそう呼ぶ。
サラとは、同じ寮になった白咲 由姫の通り名。
ピンクの髪に水色の瞳が特徴な美少女。
因みにfatalの総長、春季の恋人。
由姫だけ本名を知っているけど、由姫は今も私のことはサラと呼んでいる。
本名を隠していたのは、ある事情があった。
最近連絡してないな~
因みに蓮兄は私が、ミアだってことは知らない。
気づいているかもしれないけど。
伝説の女…そんな風に呼ばれてるけどガラじゃないし、全然そんなことない。
サラは2年前に姿を消した、伝説の女。私も何故かそう呼ばれている。
いや、ホントに伝説の女が2人いていいのかと思うけどね。
サラはbiteを潰したから伝説。めっちゃ可愛い見た目してるのに強い。
理想だよね。私全然可愛くないからさ。伝説の女みたいな憧れるような人間じゃない。
因みにbiteは、fatalがNo.1になる前にトップだった族。
もう1つのnobleは、うちの兄…蓮兄が総長をやってる族。
生徒会メンバーがnoble所属なのかな。
最後に会った時No.1はfatalだったけど、正直今のNo.1はnobleだと思う。
だって春季弱いのに蓮兄バカみたいに強いもん。
アイツが勝てる訳ない。
私がしたことといえばサラを手伝ったことぐらい…?
他に色々やったけど大した事してないけどなぁ…
えっ…?
いったいどういう状況になっているのかまったくわからず、開いた口が塞がらない。
私、チビだしグズだし秀でたところなんてない女なのに……みんな勝手な幻想を抱いてるんじゃないかな……
どうしよう……ミアが私だってバレたら、がっかりされそう……
っていうか由姫どうやってこの学校通ってるんだろ。
やっぱ変装してるのかな?
片思いの相手って……!嘘……!
驚きを隠しきれない私を見て、舜が不思議そうにこっちを見た。
噂がひとり歩きしちゃったんだ……
だって私、舜と会ったことないはず……
助けた…?いつだ?
舜は、口元を手で隠すように覆った。
いつの間にかついていたらしく、視線を前に向ける。
……寮ってこんなに豪華なんだ…こわ…
どこぞの高級マンションかと思うほどの造りに、目をぎょっと見開いた。
慣れた足取りで入っていく舜についていき、エレベーターに乗る。
すると、舜は最上階のボタンを押した。
最上階の、一番奥って……
こんないい部屋に住ませてもらっていいのか…?
その時、隣の部屋のドアが開いた。
…由姫じゃない?凄い変装してる。
蓮兄だ~!変わってない。相変わらずカッコいい。
あ!それここで言うのはヤバいって!
そうジェスチャーして必死に伝える
伝わったみたい。よかった。
そう私に言って蓮兄は自分の部屋に去っていった。
















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。