遠くで鳴る風の音に耳が冴えて、どうにも寝付けない
そんな夜は、止まらずに過ぎていく
孌は眠気が吹き飛んだ頭で考えに更ける
普通に考えれば夫婦、しかし裏に何かある気がしてたまらない、話を聞く限りは鷲脅が強引に煙雨を我が物にした可能性がある
二人の面影が残る煙雨の顔立ちからして血縁者と考えられるが、しかしこれは憶測だから分からない
考えたくもない可能性が次から次へと浮かんでは消し去っていく
ぎゅっと目を瞑ったが寝れそうにも無かった
隣合った布団の衣擦れの音を最小限に、それと同様に話し声も小声で、垨治と孌は動き出す
暗闇で、光源は襖の先から洩れる月の光だけだ
そんな中で垨治の顔が朧気に浮かぶ、深刻な表情で眉間に皺を寄せた垨治は相当に怒っている
知ってる、この笑みを
大好きな主人の為に、大好きな当主の為に、大好きな御方様の為に、大好きな仲間の為に、大好きな居場所の為に
垨治が見せる静かな怒りの顔
いつの間にか起きてきたのか、巫人が静かに顔を此方側に向かわせながら弱く同意する
此方は逆に悲嘆に暮れている
孌は、この二人の恐ろしさを知っている
いつも目立つのは威流碼や棗樹、小桜芽辺りなのだが、本当に恐れなければならないのは、、、
この二人だ
そんな二人が頼もしくて、ニタリと笑いを溢した













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!